第3話

 受付で名前を書くと、エレベーターに乗り、妹は八階のボタンを押した。


 いつも面会に来ている母や妹は、この十階建ての大きな病院に精通していた。


 僕はエレベーターが階数を登る毎に大きくなる獣の雄叫びに苛々していた。



 八階につくと獣の雄叫びは突然大きくなった。


 この階に獣がいるようだ。



 僕は母と妹に導かれるまま、父の病室に足を進めた。




 病室の扉を開けると、そこに獣はいた。




 雄叫びをあげていたのは父だった。




 物凄い音聲だった。恐らく悲鳴だったのだろう。しかし、悲鳴というよりジェット機の轟音といった方が良かった。



 同室の病人達はよく耐えられるものだ。




 

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