南の森の王


 考えすぎたためかいつの間にか気を失っていた。だが、だれか私をベッドの上に移動させたようだった。枕元にある棚に紙切れがひとつ。

 紙切れには、メッセージが書かれていた。


『マルーリさん、明日は南の森の城へ向かいます。一泊する予定なので少々羽を伸ばせたらいいなと思います。』


 南の森、今いる山の麓に広がっている樹海のことだろうか。

 マルーリと呼ぶのは王ぐらいだ。名前はなくとも、これは王からなのだろう。

 ふと思う。

「南の森…そこにもカメラ飛ばしてなかったか。」




 今回の同行者は、フヨウのみ。今のところヤマメの従者らしい姿をみていない。

 身支度中、早めに終わった私とフヨウは王を廊下で待っている。

 1日ぶりの王は少しそわそわしているような素振りをしていて、落ち着かず、ボタンを留めようとする手がブレブレである。

「南の森の城ってなんです?」

フヨウに訪ねる

「ドゥブラ公爵の城。デモクラ・ココの実の兄さ。」

「へえ…って、年長序列じゃないのですね。」

「力が物言う世の中だから。この山の噴火を沈めたココが王さ、ちなみにこの山の主はヤマメの弟分に当たったり。」

 ここで出たかヤマメの弟。

「それで、何故ソワソワしてらっしゃるんですか、それに昨日は少しも姿を見せませんでしたよね。」

「結局コロに顔合わせしてなかったんだココ」

手を口に上げてフヨウがやらしく笑って見せる。

「いや、兄貴にどうせ番候補見せられるからそれで悩んでて」

「つがい…」

 儀式の相手のことか。

「今悩んでるとこじゃないでしょ。ドレスコード完璧なんだから、ついてから考えよう。」

「嫌なら断ればいいですよ」

「そうだな。いつもそうしていたし」

フヨウが肘を当てて耳打ちする

「それで50年子なしさ」

 ドンッ

 王が勢いよく足踏みして

「40と6年だよ」

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