悪夢 とそれを止めるもの

 その日の夢は、涼しい湿原だった。

 

 宛もなく霧の中をさまよっていると、足に草や土とは別の物が当たるのを感じた。


「布?」



 そのままの方向へ向かうと通る布に赤茶けた染みがつきはじめた。



 進めば進むほど染みは多くなって、霧を抜けた頃には、辺りいったいシミに覆われていた。



 中心で人影が動いているのが見え、次はそちらに向かう。人影は二つでどちらも見覚えがある。



 ヤマメとガロウだ。ヤマメが食卓につき、ガロウが奥で調理している。さらに奥には山が出来上がっている。




 大概は予想がつく。



 はっきりと見える場所についても二人は全く私には反応しない。


 ヤマメはなにか一心に食べていて、ガロウは煮物をしている。



 どちらも肉だ。




 二人の後ろに築かれた山は、予想していた通り、おぞましいもの。


 すでに腹から裂かれそこにあるべきものがなくなっていて、顔が見えるものは苦痛の表情を浮かべている。


 背筋を冷たい感覚が上から下、下から上へと繰り返して、気分が悪くなるものが通っている。



 それでも目が話せずにいると、見覚えがある顔立ちが見えて…


「それ以上はダメーーーーッ」

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