おまじない眼鏡

 ヤマメが鍋の中身を全てさらった後、雑談も程々にして皆帰宅することになった。


「王、明日はコロさん借りますよ。料理をおしえてもらいたいので」

「あー、うんいいよ。よそにいく予定もないし」


 フヨウは一人自分の指に電球を模した光物を作り出し帰っていった。


 ガロウとヤマメは、ガロウの髪が炎のような明かりになり辺りを照らして帰った。


 私と王は、昨晩もらったランタンを持って、王を担いで帰った。


 ランタンの光で少しだけ動ける王は私に尋ねてきた。


「貴方の眼鏡には、なにか施されているのですか」


 光を乱反射する眼鏡を王に向けると、閉じそうな目が大きく開いた。


「ただの思い込みですよ。昔、両親にこれを掛ければ言葉が皆と同じように丁寧になりますよって言われて着けてみてからずっと、抜けないんですよ。だから、いつになっても眼鏡を外せば野蛮な私になってしまうんですよ」

「集中するときはどっちだい」


 宙を見てから


「作業によって変えてますね。欲がでる時は眼鏡を外しますし、自分の自己満足であれば眼鏡をつけたままで。」

「それだとあまり差はないんじゃない」


 クククと耳元で笑ってくる。



 螺旋階段を上っている辺りで私は急な眠気に襲われ、王の重さにも耐えきれず階段に手を着くことになってしまった。

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