農村サニーフレア
町の端から、ヤマメの能力で空を滑空していくのがサニーフレアへの一番の近道だ。
山の高さは1594メートルほどあるらしく、途中から徒歩になる。サニーフレアに近づいていくと少しずつだが体感気温が上がっていくのを感じた。
さらに近づけば黄金色の畑が風に吹かれているのがみえ始めた。麦畑なのだろうか。
気に止めなかったが山の木々に混ざって茶畑も広がっている。
降り立ってみればせせらぎが聞こえるほど静かな場所で、どの植物も日の光を満遍なく受け取っているようだった。
ヤマメを除く3人は、どこか生き生きとしている。予想だと、フヨウが王と同じタイプで、ガロウはまたべつのタイプだろう。
「サニーフレアじゃないと食べられない食材とかもあって、月1で行くこの日がいつも楽しみなんだー」
スキップ混じりに先頭をいくヤマメは、この空間になれない私に声をかけてくる。
「肉はこの国じゃ手に入らないって聞きましたが、どこで手にはいるんですか」
「海を渡ったとこに英世って大陸があるんだけど、そこのちょうど上空に第一アースがあるからそこから調達するよ」
「第一アース?」
フヨウが指差して
「第一アースには、相当な実力者じゃないとエバーワールダーは入れないんだ。ま、今は出入り出来ないんだよね。英世が紛争中だから」
「お陰様で、あっちに調達にいったトキトも帰ってこないし、ああお腹すいた」
ボケッとしていったガロウの顔に力が一瞬入る。常に昼寝前の子どもみたいな表情のガロウだがヤマメの言葉にはしっかりと耳を向けているようだ。これは、わざといったものだと判断したのだろう。
「あ、見えてきたよ」
進路の先には果樹園が広がり、奥の方に高い建物、納屋が見える。
日が真上に来るような時間帯にも関わらず、私の額には汗一つとして流れてこなかった。
納屋に入ると人目見てガロウの家族だとわかる人たちが、並べられた農作物の前に立っていた。
「おかえりガロウ。ヤマメちゃんもいらっしゃい」
「よくぞ、お越しくださいました王。今月の作物もいいものばかりですよ」
「フヨウのちゃらおー一緒に遊ぼー」
この家族はこうした客人に慣れているのか其々に別れて、もてなしに徹していった。
私は王についていくことにした。
固い返事をしたガロウの家族は、この家の長という感じの人だ。
「エンさん。この方はエイリアンのコロマルーリさんです」
「頃丸里です」
「カゴウ·エンです。我々はエイリアンの方々から聞いた植物を創造して、栽培しております。」
「外の小麦畑や果樹園は私の星にもありました。私はあまり役にたたないのかもしれません」
エンさんは目を丸くして
「小麦というのですか。いや、あれは昨日届けられた遺骸からでた種を植えたものなのです」
この言葉に私はすこし固まってしまう。
「昨晩、まるっこいふわふわのものをいただきましたが」
「あれは、シロムーニーという穀物をひいた粉から出来たパンだよ。マシマロクチフヴリというエイリアンの食物でとても甘い。そのぶん栄養価は高いですね」
昨日種をてにいれて、次の日には立派な畑が出来上がるだなんて不思議なことだが。彼らエバーワールダーからしたら普通のことなのだろう。
「それで、肉の代用品があると聞いたけど本当かい」
戸から見える小麦畑に思いを馳せているなか王が話題を変える。
「カロリーは劣りますがね。畑を生き返らせる為に使用していた植物が肉と同じ栄養を持っていたんです。ヤマメちゃんの為に商品として用意させていただきましたよ」
ここでもヤマメは人気のようだ。
広い納屋を駆ける小さな人影が2つ見えた。
奥の方でフヨウが目をかくして、数を数えている。
かくれんぼか。
「よーし、ユウガ、ホタル!探すよ!」
フヨウがそういうと、フヨウの体は液体状になり、納屋の隙間に消えていった。
それって反則なんじゃないか。
「ユウガとホタルを見つけるんならそれくらいしないと。夕方までかかっちゃうから」
「納屋の中だけならいいじゃないですか」
「だから大変なんだよね」
王はフヨウが帰れなくなったときの帰る手段を考え始めた。
静かな納屋の中、一分と過ぎず
「キャアアアアアア冷たいいい!」
上の方から白い炎のような髪のユウガが落ちてきた。
「ユウくんは、熱として自分を変化させることができる。一番熱が貯まる屋根にいたんだね」
「むうっ、兄ちゃんがんばれー!」
尻餅をついた体制のまま拗ねているユウガに近づいて見た。
ヤマメとは違う本物の幼さがあった。
膝をまげてユウガと同じ目線に合わせる。
ユウガは、上としたで色が別れた目を潤ませて、私に抱きついてきた。
「うわああん、怖かったよおおお」
王たちに比べ暖かい彼ら。姓をカゴウと言ったか、火豪と敬意を込めて記させていただく。
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