城上町の住人の数人
日が昇り部屋が明るくなっていた。体を起こすとデモクラ王がベッドに腰掛けていた。
「睡眠をとらないといけないんだ。私たちとは違う理由で。しかも起きるのは遅め。燃料タイプになるかもね。」
眠い目を擦って眼鏡を手に取る。曇った視界が落ち着く。
「君って目は悪くないよね。なのになんでかけるんだい」
「瞳をあまり観られたくないんですよ」
長いこと眠っていた筈なのに腹が空いた感覚や、衣服の乱れはなかった。何か一つ超越したみたいだ。
「ほら、出掛けよう待たせてるから」
連れていかれたのはボーエンと書かれた店。普段はヤマメに対してのみ食材を調理して出している小さな飲食店だが、町に住む人たちの休憩所でもある。
店のなかもやはり外と同じくらい明るい。店内には昨晩面倒を見てもらったヤマメと初対面の人が二人いた。一人はヤマメの小さな膝で寝ているようだった。
「ガロウ君、お客さんきたよ。起きよ」
「むにゃっ、追い出せよフヨウも一緒に」
「昨日ここで待ち合わせするって決めていいよっていったの君じゃーん!」
寝ぼけているのがガロウ、うるさいのがフヨウと横にいる王が説明する。ガロウはフヨウが訴えをするなかまた眠りについている。ヤマメの膝を独り占めする彼が羨ましい気もする。
ヤマメは優しい顔をしてガロウの炎のような髪を撫でる。耳に顔を近づけてヤマメは
「お腹すいた」
これにガロウは飛び起きてカウンター奥に破竹の勢いで吸い込まれていった。
「この店の主はガロウだよ」
だとすると、昨日の食事は彼が用意したのだろう。
「ああんもう、ヤマメはあいつばっかり優しくしやがってー」
「弟と姪にも優しいさ。フヨウはなんかやらしいから距離とってるけど」
「可愛い肉の塊ちゃん、俺の神聖な視線がやらしく思えるの」
「ほんっと追い出すよ」
このやりとりを王は苦笑いで見ている。
カウンター席に座ろうと手で合図を送られる。ヤマメがフヨウをあしらうとようやく、ヤマメが王に話しかける。
「ココ、これからはフヨウは不要だ」
「そんなこと言うなよヤマメ。フヨウがいないと出来ないことが多いんだから」
「そんときその時で呼べばいい。こいつは災いだ。」
オレンジ色の中に一房赤い髪を持つフヨウは机に突っ伏して泣いている。ふと、服の感じがツキヨに似ていると感じた。
奥の方からよい匂いがしてくるとガロウが料理を持って出てきた。
「わぁおいしそー」
無邪気な笑顔をヤマメはガロウに向ける。照れくさそうに奥をガロウは向いた。
「コロ。あーん」
口を開いて頂く。昨日のものに比べて数倍美味しい。
「今日はグリマラで唯一食物の栽培をしてるサニーフレアに行くんだ。サニーフレアはガロウの故郷さ」
「肉の代用品もある」
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