船 のこりもの

 この部屋は自由に使っていいと言われた部屋に入っていた。何故かデモクラ王も室内にいる。元々所有者なのだし、仕方のないことかもしれないが。そんなことより。

 一つ私は困っていた

「あー、私の荷物を船からだして持ってきたいんですが」

 船?と間をあけてから

「それは大変だね。運び屋を呼ぼうか」

「運び屋ですか」

「ツキヨがもう頼んでるかもだけど」

 首を傾げて微笑もうとした瞬間


 チリンチリン


 チャイムが鳴り響く

「来たかな」

 部屋は螺旋階段の上にあるのでかけ降りる。王は何の躊躇もなく、手すりから飛び降りた。重たい扉が開かれると、外には前髪が目を隠すほど伸びた身長の高い人がいた。不気味な印象を放つ人は、恐る恐る話始めた。

「あ、えと、ツキヨさんから、マルーリさま宛てです。」

 後ろの方には船が置いてあり、パラシュートは取られている。

「で、では」

会釈をして、向きを変えると背中から羽が生え何処かへ飛び去った。

 それを見ていたデモクラ王は

「新人かなー。」

 極めて呑気な声を上げた。

 船をどうやって持ってきたのか、という疑問はあるがとりあえず船のなかに入る事にした。

 船への入り口は二つある。縦、横どちらの方向に倒れても同じように入れるよう設計されている。

 船内は一度離れる前と姿を変えていなかった。残った空気から仲間がまだ船にいるかのかもしれないとよぎるが、そんなことはもうじつげんしない。今はもう食肉になっているのだろうから。


 私はどうだ。


「重力圏内から離れるためにどれくらいの動力が必要なの?」

 後ろからついてきていた服の乱れたデモクラ王が言う。

「この鉄が常に上昇をしなければいけないわけですから、この鉄の量と同じくらいの重さになりますね。体積量はこれの倍になります。」

「ああ、打ち上げ式なの」

 エンジンの方に目をやった。


 我々の文明では離陸と着陸の安全を備えた宇宙への乗り物はできなかった。なので、宇宙に出るときは命懸けで、この永世エバーワールドのように確かな重力がある大きな星からの脱出はすることができない。カメラはただの母星との連絡手段にしかすぎない。


 船の中の部屋の明かりをつける。操縦室は、外からの光で明るいので着けなかった。

 光が部屋を満たすと、デモクラ王は反応した。

「わお、それすごいね。どうやったの?」

「電気をあれへ巡らせられるようにしたんですよ」

 蛍光灯を指さす

「じゃあそれはどうなってるんだい?」

 覚えている限りの知識をひらけだす。

「真ん中の方のフィラメントと呼ばれるところに電気が流れることによって高温になって、高温になった部分が光るんですよ。それで裸のままでは、火事になってしまうので硝子をはめています」


 王は扉の所から、私のいるところまで移動し、私の肩に左手を添えて、右手を電球にかざす。

 デモクラ王の体は電球の光に包まれた。いや、反射をしている。右肩の手は磨かれた金剛石のように光を細かく、多角的に放射している。


「なるほどね。電気か。マルーリさんの星は、電気が溢れているんだ。」


 手を電球から離す。それで私も我にかえり、自身のロッカーや、割り当てられていた寝床から自分の物を取り出した。

 デモクラ王はいつの間にか操縦室の一番前の席に座っていた。この星に降りようとしたときの私のいた場所だ。

 椅子はデモクラ王の2倍ほどの大きさに見える。

 椅子を回して、

「マルーリさんは星に連絡しなくていいの?」

「今のこの姿が、私であるとわからないと思います。恐らく信じられないでしょう」


「帰りたくないんだね」

 嬉しそうに微笑んだ。

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