城上町 じょうじょうまち

 私は城の案内中ふと、王の背中に質問を投げ掛けた。

「先程のツキヨとはどのような人物なのですか」

 私の前を歩く王は立ち止まり肘を抱えて振り返って見せる。

「相談役ってとこか。私の従者には頼めないことをしてもらったり、外交の手配をしてもらったりとか。」

 どちらかというと、あまり話題の対象にいいイメージを与えることはない顔をしてツキヨのことを話した。肩眉に皺が寄っている。普段動かないであろう、左側の口角だけを上げていた。


「そろそろ、城上町につくよ」

「じょうじょうまち」

 城下町ではないのか。

「湿地に町は作ることができないからね。木の上にはしっかりとした足場があるからそこに町があるんだ。」

 木の上に町だって?

 疑問は尽きないが、緩やかな坂道には光が満ちていく。明るくなるほど、風が感じられるようになり、鳥に似た鳴き声が聞こえてくる。葉のざわめきも遠くから聞こえる。


 ようやく平坦な地面に立つ事ができた。空は見当たらないがその代わりに青々とした葉が上を覆っている。建物は大小様々で、宙を浮いている建物すらある。

「ここに住んでるのは、鳥系のエバーワールダーと、私の従者、管理人と研究者数人だけ。」

 振り向いて王は続ける

「でも、時期が来たら国中から人が集まるからこうして泊まれる場所を作っている。普段は質素だが派手もの好きだからねみんな」

「エバーワールダーというんですか」

「ああ。この星はエバーワールド。この星に住む人はエバーワールダー。」


 エバーワールダー…永世人か。


「町へ上がってきたのは、何故ですか」

「マルーリさんのこれからの生活の場をどうしようかと思ってね。私は基本城に住んでるけど、町にも家を持ってる。マルーリさんにはそこを使ってもらおうと考えているんだけど、いかがかな」

 てっきり逃げ場の少ない場所に隔離でもされるのかと思ったが。

 歩みが止まったので辺りを見回すと豪邸が立ちはだかっている。母星だと、これほどの家を建てる事ができるのはとんでもない成功者だけだろう。ミリオンセラーとか、億万長者とか。


「時々従者とその連れがくるかもしれないけど、みんないいひとだから。あ、なか入ろっか」


 城門と同じように重厚な扉が開く。相変わらず装飾はなく味気ない。

 玄関に入ると二階に続く螺旋階段、白石を床にところ狭しと敷いた広い廊下。照明器具のようなものは目に入らないが、明るい。

「光は、私たちの力の源だから。日の上に有るときだけは、木がその光を通してくれる。光だけね」

「食事を、とらないのですか」

「食事?とる人もいるけどグラマラには、あまりいないよ。食事が必要なの?」

「ええ、はい」

 へぇーと何か気づいたかのように私の手を取った。


「ほんとは要らないかもね」

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