グリマラ -輝きの国-

 見えているものが変わったのではなく、自分たちそのものが変化していることに気づくのは早かった。


 体が座席より小さくなったことにより、数人が天井に叩きつけられた。

 船内には、悲鳴が飛ぶ。


「今座席についている者は耐えろ。離れた者はこれから対処する。」


 座席にしがみつきながら、緊急時に強制的に座席に戻されるスイッチをおした。


 力の向きに逆らい元の座席ににつく。

 天井には血痕が残った。


「パラシュートをこれより開く。振動に気を付けろ」


次星にくる同じ星の者には、話さなければいけないことがいくつもある。

 とか、

何故わたしが最初なのだ。


 と考えたのちパラシュートのスイッチを押した。

 頭が浮くのを感じ、目の前は暗転した。 

 






「先生、起きてください。」



 一声にわたしは気がついた。あの後気絶したようだった。


「先生の命がけの判断、操作に我々は、命を救われました。ありがとうございます。」


「ありがとうございます」


「感謝よりまず、あのカルデラに降りることはできたのか」


 成功しています。と答えるのを耳にしたあと、外に目を向ける。


 広大な湿原と禿げ山がしっかりとその場にあった。

 霧がかった景色は幻想的であった。


 皆に支えられながら、外に歩みでる。水草の青々とした香りが辺りに満ちていた。


「あれが城ですか」

 霧を貫いた幹が見えた。


「城の方向から誰か来ますよ」


 霧にうつる影は、同じ形の人型で、こちらをうかがっているようだった。



「私たちは敵ではありません。この国の王に御目にかかろうと足を運んだまでです。」


 影は顔のわかる位置まで近づき


「怪我人はいますか」

「5人ほど」

「分かりました。城に到着しだい手当てをします。」


 使者は私の顔をのぞきこみ、


「あなたは、先につれてゆきましょう。」



 間近で見たからか、使者は宇宙の闇のようであった。

 わたしは使者に体を預け、城に向かった。


「失礼ながら、我々は貴方たちがこの星に降り立つ事ができるとは、予想していませんでした。」


 使者の足取りは泥に絡まれることがなく、異様に速い。

 担がれている私には全く振動が伝わってこなかった。


「何故我々の言語を解することができるのですか」

「空から落ちるとき姿が変わったでしょう?それと同じように言語もここに入る時点で変わっているのですよ。」



 大木が霧の中でもはっきりと見えるようになってゆき、私だけ先に城についた。


 大木は水の張られた堀に囲まれており、たった一つの大きな門があるだけ。使者は自身とわたしが通るだけの隙間を開き城内へはいった。


 城内には、装飾という装飾はなく、広いだけで簡素そのもの。城門からすぐの広間には外からの光がふしぎと、密閉された空間に入ってきている。

 静かすぎて耳鳴りがした。


 広間についた私たちは小さな扉に入った。


 下ろされた私は、簡易ベットのようなものに横にされる。


「気づいていないんだろうけど、あんた額パックリ切れてんだよ。」


 何をいっているんだかわからない。額に触れようとするが、その手を止められる。


「ほら、鏡見てみなよ。」


 渡された小さな手持ち鏡をのぞきこむと、確かに額に大きな傷があり、まだ出血を続けている。



「分かっただろ。すぐに治療するから」


 使者はポケットから缶の入れ物を出す。そのなかにはキラキラした粉が入っていた。



「それは、なんですか」

「この国がグラマラ、輝きの国って呼ばれる理由。じっとしてて」

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