不幸の人
子供の頃から幽霊に好かれる体質だった。
そして自分はとても不幸だった。
でも、ある時からその幽霊を操れる事に気付いた。
「あいつが気に食わないから私なんかじゃなくあいつを呪ってよ、お礼ならする」
そう強く願うと数日以内に必ず念じた相手に不幸が訪れる。胸がスッとした。幽霊には礼として好物のお菓子から動物の死骸まで、可能な範囲で求められる物を与えた。すると幽霊はまた言うことを聞いてくれる。礼を目当てに沢山の幽霊が寄ってきた。
気付けば「自分は悪人を退治するために幽霊と呪いを扱える凄い人間である」と思うようになった。
自意識は膨らみ続けて破裂する事を知らず、気分が良かった。
誰かが自分の思い通りに不幸になる度、自分はその不幸を飲み込んで成長する。
人の不幸を、人の悲しみを、人の体を食らう怪物。
凄い。カスだった自分が、カタルシスを得る事が出来るなんて。
表向きは正しく人を救う看護師、裏では悪人を退治し飲み込む怪物。
私は偉い。
ただ、時々殺したはずの悪人が幽霊として私のところにやってくる事がある。怖い。
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