「彼、曰く」
コンビニで夕飯と酒を買い、先輩にはヒロキの部屋に来て貰った。
酔った先輩曰く。
つい最近、アキラはヒロキのいない日にカフェに来た。
「なんでかわかないんだけど俺の知り合いと一緒に来て、真剣にずっと話してたんだよ」
先輩は元々この界隈が地元だ。中学時代はブラスバンド部で今はそのOBで結成される社会人オーケストラに籍を置く。月に数回練習をして、春に駅前のホールで定演を行い、有志でお祭りにも参加する。
アキラと一緒にいたのはそのオーケストラのカサイさんという男性だそうだ。
「カサイさんの恋人だったナオさんもお前の友達と似た境遇………義足でさ。確か3駅先のマンションに住んでた」
「だった、って、なんで過去形なんすか」
「少し前に事故で亡くなったから」
………なんてことだ。
「ナオさんは俺も知ってるけど、義足でも体は丈夫だった。でも車の運転中に事故ったんだよ。カサイさんは何かあってメンタルが弱ってたのかもしれない、幻覚を見てたのかもしれない、って」
………体が半分の人間に襲われる。
不意にあのメモを思い出し寒気が走る。
アキラと同じく体にハンデを抱えていた人が近場にいて、亡くなった。気分が悪い。
「最近カサイさんとはゆっくり話してないからこれは俺の想像なんだけど、ナオさんとお前の友達が同じ病院に通ってた可能性はないか?定期検診とかでさ。カサイさんがお前の友達と接点を持てるとしたらそこかなって。ヒロキがいくら家族ぐるみで仲が良かったとしても、その失踪した友達の病院までは流石に詳しくないだろ?親御さんなら兎も角さ」
先輩は、明日、近所のお祭りにオーケストラ有志が出演するからカサイさんに会ってみないか、と提案してきた。これは承諾するしかない。
アキラの母親に病院の事でメールしてみると、すぐに返信が来た。
「茨城のお医者さんの紹介で良いマッサージ師さんが常駐してる整形外科を行きつけにしてました。あなた達の住んでる近所の××整形外科。たまに紹介された大学病院にも行ってたはず」
コンビニの近くにある整形外科だ。ヒロキも1度、首を寝違えて行ったことがある。
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