再び自転車

「またかよ」

私は憤る。またコンビニの前で幽霊に不可解なヒッチハイクを頼まれたのだ。

「そこをなんとか」

片足の無い男の幽霊が目の前で頭を下げる。やはりうすらぼんやりとした、触ると消えそうな幽霊だ。

「この前あなたが良くしてくれたと聞いたので」

あの血だらけの少女か。人間が知らないだけでどこかに幽霊同士のネットワークがあって、このコンビニの前は野良幽霊の関所になっているのだろう。


その後、トータル5人位の幽霊を自転車に乗せた。

指定された場所で降ろすと幽霊達はすぐ近くの家の方に消えていく。

その先で何をするのか気になるが、聞いてもはぐらかされる。

そして翌日私の身に何かしら良い事が起きる。

職場の先輩に久しぶりに昼飯を奢って貰えるとか、狙っていた洋服がセールで手に入るといったような。


ある日後ろに乗せた幽霊は珍しく微かな重みがあり、運転中にバランスを崩しそうになった。思わず通りすがりの男性にぶつかりそうになり、慌てて謝る。

自転車がパンクしたら弁償してもらいたい。


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