第7話 商業ギルド 3

鑑定室の予備机を借りて、レアは指定されたかごの中の薬草を鑑定している。


量は確かに多いのだが、使えない雑草が多すぎで、カサ増しにワザと入れているのかと思ってしまう。


「こっち終わりました。かなり気になったんですが、薬草以外が多すぎです」


「それ、毎週のことなのよ。学院の採取の教え方が悪いわけじゃなくて、採取する学生のやる気がないからかもね」


裕福な子達なのだ。

薬草ごときと思って、採取がおざなりなのだろうとナーリアが言う。


「採取してくれるだけ、有難いと思うようにするくらいだわ」


なにせ雲の森にダンジョンが出現して、ポーションから各種の薬の売行きがかなり増え、薬草採取が一時期追いつかない事態になったのだ。


雲の森も、素材採取でそれなりに稼げるが、冒険者からすれば、ダンジョンの方が更に稼げるのだ。


冒険者が採取してくる筈の、薬草分がかなり減り孤児院からと採取会を開催してまで集めても、まだまだ心ともないと言う。


「お陰様で、かなり早く減ったわ。ライナが居なくなっただけでも、大変だったけど今日は上がって貰って大丈夫よ」


レアがお手伝いしたのは、3時間ほどだった。

間に昼の休息を挟んで、4時間ほど商業ギルドに居たことになる。


「お疲れ様これ報酬の銀貨1枚と、銅貨50枚」


銀貨はそのまま渡され、銅貨は袋に入って渡された。

銅貨は確認するまでもなく、鑑定スキルを使えば銅貨50枚と表示されている。


「ありがとうございます。次はいつになるか分かりませんが、またよろしくお願いします」


工房で、週に何日商業ギルドに通うことになると決まるかなぁと思うが、臨時の稼ぎはやはり嬉しい。


チーフのマラガに挨拶して、ギルド内の売店を見て行こうと思うレアだ。


向かった売店は、やはり布地や服飾パーツが多いが、筆記用具やノートもあった。

文具を見ると、なんとなくワクワクしてくる。


「まとめ買いした方が安い」


定価で買っていた鉛筆が、5本が銅貨32枚と1本分割引かれている。

もっと早く知りたかった。

ただ消しの実は、銅貨1枚と変わらなかった。

重要度がやはり低いようだ。


インクとペンもあるが、こっちは工房で好きに使って良いと言われているから購入はしない。


ノートもあるが、洋書風の重圧感があり、このノートで自分だけの図鑑完成させられたら良いなと思うが、値段が金貨1枚もする。


これでも安いかもしれないが、レアに買えそうにない。

このノートは、魔道士とかの魔法書を書き上げる為用だろう。

魔法書は、買えば金貨数十枚はするのだ。

本館は貴族やら裕福層が出入りするから、その人達向けだろうか?


側にあった同じ紙だと思うが、無造作に折ったノートとも言えなくもない紙の束が銀貨1枚だった。

厚さはそこそこあり、これならレアにも買える。


「これって、暦?」


その紙の横に、暦があるのを見つける。

まさか暦まで、あるとは思わなかった。

値段を見ると銀貨5枚と、かなり高い方だ。

この世界、前世と変らず月は12あるが、1ヶ月は30日毎だった。

360日と前世より、日数も少ない。

暦は教会主導で売られているようで、暦の右上に教会のマークが描かれていた。


書き込み出来るようになっており、貴族か商人向けの商品のようだった。


これならレアにも実用的に使えて、先までの予定を書き込めるが、やはり高いので買わないし、自分で作れば良いだけだ。


ただ、これも転生者が関わっているような説明文が書かれた説明書が、購入検討する者向けに置かれている。


「三代前の聖女様が広めた?」


また三代前だ。

その頃の聖女様が凄かったのか、領主夫人みたいに、転生者なのか?


学院に通ってないレアは知らなかったが、三代前に魔族の脅威があり、異世界召喚により7人の異世界の若者達が召喚されていた。

学院生であれば、歴史として教えられていた。


特に隠された事でも無かったが、当時の平民ならともかく、その後三代も月日が過ぎてしまえば、昔は魔族の脅威があったと、言った認識しか平民は持たない。


召喚された者の子孫は、貴族に血の繋がりを今に残しているが、貴族社会と関わる事もないレアが知る事はそうないだろ。


この売店内に売って居る物に、転生者が関わっていそうなそれらしき物が、いくつも置かれており、高くレアには買えないが懐かしい気持ちになった。


鉛筆と紙の束を手にして会計してもらい、残ったレアの臨時収入は、銅貨18枚になった。


「もっと大きいサイズの紙、出せるようにしたいなぁ」


ハガキサイズは、まだまだ小さい。

A2かA3サイズくらいの紙が出せれば、紙代の出費がないのにと思った。


魔力はそれなりに減るが、物心ついた頃から紙を出して遊んでいたらし自分の魔力は、職人見習いが持つにしては高い方だ。


これは、たまたま紙を出す行為で魔力を使いその分増えたのだが、レアは魔道士の魔力を増やす訓練方法の1つに、該当した行動だと知らない。


日頃から自分が出した紙を使ってメモしたり、スケッチしたりと、紙の必要性が高く寝る前に出せるだけの紙を出してストックを増やしていただけだ。

寝てる間に魔力は回復するし、次の日同じ事を繰り返していれば、紙も増える。


アイテムボックスに、無限に物を入れられるしマジックポーチもあるしで、前世と違って物の収納に悩む必要がないのも嬉しい。


「でもここで、安く買える物あるの分かったし」


買った紙で、製本すれば良いだけだ。

中綴じ、和綴じ、平綴じなら前世で作った事もあるので、糸は蜘蛛糸で代用出来る筈だ。

表紙は、この紙に虫からの染色用インクを使えば作れそうだ。


ただ平綴じは、さっき見たノートみたいに作りたいが、材料を用意する時間がかかるから、今回は諦める。


自分が出す紙なら、厚紙だろうが薄い紙だろうが調整出来るが、全てハガキサイズなのだ。


楽なのは中綴じだが、味気ない気がする。

和綴じなら、表紙が薄くても違和感ないかと和綴じに決めた。


良いもの買ったと、ホクホクしながらレアは工房に戻った。









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