第350話  修道士エドモンド・フォルトナー





教会の敷地に招き入れられたイングマルは裏庭に案内され小さな東屋に腰かけた。




エドモンドは「ジェームス殿からうかがったのだが農業の事を知りたいそうだな?農業がしたいのかね?」とイングマルに聞いた。




イングマルは「いや僕が農業したいわけではありません。


農業の事も知りたいですがこの土地の収穫量があまりに低いのは何故なのか知りたいのです。」と言った。





エドモンドは「農業をしたいわけでは無いのになぜそんな事を知りたいのかね?」と聞いた。





イングマルは「今度ライオネル卿のお屋敷の北にあるスベン川に桟橋を作るんですがうちのギルドが全面的に請け負う事になりました。




エストブルグ港を使わなくてもこの桟橋から直接荷をアントウェルペンに運べるんですが肝心の運ぶ荷が無ければどうにもなりません。


うちのギルドも商売あがったりです。



ジェームスさんからこの地方の収穫量を見せてもらったんですがよその土地よりあまりに低すぎる、何でこんなに低いのか知りたいんですよ。」と説明した。






エドモンドは「なるほど・・・・ちょっと一緒に来てもらえるかね?見せたい所がある。」と言った。





イングマルは「馬車で来てるので乗っていかれますか?」と言いエドモンドはイングマルの馬車に乗り込んだ。




犬のトミも馬車に乗っていてエドモンドの匂いを嗅いで挨拶した。






スベン川の上流域に向かって移動しながらエドモンドは「4年前、大きな水害があってな。


川から数km離れたこの辺りまで水が来たのだよ。





幸い人的被害はほとんど無かったのだが問題は流れ込んだ土砂なのだ。


ほとんどは砂なのだが何しろ量が多くてな。


この辺りでも表面から30cm、くぼみのところは1m以上も砂が堆積してしまったのだ。





今もその砂を取り除く作業が続いている。」と言いながら畑の端あちこちに積み上げられた小山を指差した。




高さ3、4mの砂山がそこら中にあった。





エドモンドは「農民たちは今も毎日休むことなく畑に堆積した砂をスコップで掘り出し取り除いている。」と言った。






イングマルは「それで収穫量が少ないのですか?」と聞いた。





エドモンドは「いや、その事はもちろん問題だがもっと深刻な問題がある。」といい1つの畑に馬車を止めさせると畑に入っていった。





畑と言っても休耕地で雑草しか生えていなかった。





エドモンドは畑の土をひとつかみしてイングマルに見せた。





砂がたくさん混ざった黄色い土だった。





エドモンドは「この辺りは水害後、次の年には堆積した砂を取り除いたのだがその後この通り作物はおろか牧草さえも満足に生えないのだ。」と言った。





あちこち土がむき出しの雑草地で素人目でも荒れている事はわかった。





「草も満足に生えないから土がむき出しでちょっとの風雨でも土が流れて行ってしまう、大事な土が削り取られ益々痩せていくのだ。」と言った。




イングマルは「どうして草も生えないんですか?」と聞いた。






エドモンドは「そこだ。流れ込んだ砂には大量の鉄分が含まれていてな。



そのせいで土が酸性化してしまうのだ。




畑作物はほとんど酸性では育たないのだ。」と言った。



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