第349話  石切場






翌日早く出発し河を遡って行った。






石切場まで距離はそれほど離れておらず視界内であった。




カーブのところに岩盤が露出しているところがありそこが石切場になっていて


3隻の船は到着して錨を下ろして水深を計り始めた。





イングマルはカヌーを下ろして先に上陸し、石切場の責任者に会いに行った。





責任者のビュッカー・ユングマンは朝早くに表れた船を見て「いったい何事じゃ?」とイングマルに聞いた。





イングマルは「おはようございます。この度この石切場に桟橋を作る事になりました。これから早速桟橋作りを始めます。」と言ってジェームスからもらった許可書を見せた。



イングマルはいきなりのことで警戒されないか?と思っていたがビュッカーは許可書を見ると明るい顔になり「とうとう出来るのか!待ちかねたぞ!」




「何年も前から作ってくれと要望し続けていたんだ!やっとだやっと!」と言った。





この石切場は川に面した場所にもかかわらず桟橋を設ける許可が出ず、切り出した石はわざわざ陸路で運んでいた。




荷馬車に載せやすいよう石は小さいサイズに砕かなければならず苦労してめい一杯荷馬車に積み込んでも積載量などたかがしれている。




豊富な原料がありながら家族経営のような規模の小さな作業場しかなかった。










イングマルはホッとひと安心し「桟橋作りの許可が出てうちのギルドが全面的に請け負う事になりました。


早速作業を始めたいんですが何か要望などありますでしょうか?」



ビュッカーは「いや、特に問題ない、おぬしらに任せる。」といいすぐに作業が始まった。





船が着れる十分な水深のあるところまでは岸からおよそ50mほどあったがそこに杭を打ち込んだ。




前回と同じ様にして順番に杭が打たれて行った。




船員たちは手慣れたように段取りよく作業をしてみるみるうちに桟橋の形が出来上がり板が並べられていった。


長さ50m幅4mあまりの立派な桟橋であった。





イングマルはアントニオ船長に「桟橋が出来たらすぐに2隻に石材を積みはじめてくれる?その間に僕は人に会ってくるから。後任せていいかな?」と聞いた。





アントニオ船長は「ああいいぞ。桟橋が出来てもまだ原料が整ってないから船にのせるまで手間がかかるしな、しばらくは時間がかかるだろう。」と言った。




イングマルは「何日かかるかも知れないけどちょっと行ってくる。」と言って自分の馬車と馬を出来たばかりの桟橋に下ろした。





すぐに出掛け罪人護送時と同じ道を行き、城の前を通過しその先の教会にたどり着いた。






木立に囲まれた小さな教会だった。






イングマルは「ごめんください。ギルドシーワゴンのアウグストと申します。」と言って挨拶をしたが程なく修道士のエドモント・フォルトナーが現れた。





エドモント修道士は「よく来てくれた、さあ入ってくれ。」といってイングマルを招き入れた。




エドモント修道士は以外と若くジョンたちと同じか少し若い位だった。




修道士といっても畑仕事が多いせいか日に焼けてがっしりした体躯の持ち主であった。









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