第348話  桟橋作り3







イングマルは農業の専門家ではないし経験もほとんど無い。





だが叔父の所で商売をしていた頃、様々な農業用の機具や資材を取り扱っていたので全く何も知らないわけではない無い。




1単位面積辺りの各作物の収穫量というのをだいたい知っているがそれにしてもこの地方の収穫量はあまりに少なすぎてこれでは税収など期待できない。




エストブルグ港だけの貿易の税収だけでバーデンス領全域からの税収の何倍もあるが元々が少なすぎるので当然であった。





それにしてもなぜこんなに低いのか?







イングマルはジェームスに「どなたか地元に農業の専門家かベテランの人はいないでしょうか?何でこんな事になっているのか話を聞きたいのですが?」と聞いた。




ジェームスは書類を整えると「そうじゃな、修道士のエドモント・フォルトナーがいいだろうな。



彼なら教会の敷地で作物の品種改良や栽培方法の実験をしておる。」と言った。





イングマルは「明日石切場に桟橋を作りに行った後その人に会えるでしょうか?」と聞いた。





ジェームスは「わかった。明日そなたが石切場に行っている間に知らせておこう。その足で行けばよい。



場所もすぐわかる、この前罪人を移送した城があるだろう?その先にある教会だ。」と言った。





イングマルは「そこならわかります。明日は早めに桟橋作りを皆に任せて修道士さんに会いに来こうと思います。」と言った。




さらに「桟橋が1つ出来たので近隣の皆さんに知らせておいてもらえませんでしょうか?


しばらくは石材運びが商売の中心になると思いますが知れ渡ればすぐに皆利用するようになるでしょう。」と言った。








イングマルは当分の間、今度作る石切場の桟橋からの石材でやっていこうと思っている。




石材自体は他の石材と同じ売値だが港の使用料や手数料を負担しなくていいのでその分が儲けにできる。





わずかな額でも積み重なれば大きな額になる。






ギルドで商売をしている以上「ここで商売して良かった」という結果を早く出さなければいずれ他の船員たちから文句が出てしまう。




石材は辛うじての生命線だった。







ジェームスは書類をイングマルに渡し「これを見せればもう誰にも文句は言われまい、桟橋作りと使用の許可書だ。」と言った。




イングマルは書類を受けとると「ありがとうございます。」と言って館を出て桟橋に戻っていった。





もうすっかり暗くなっていたので作業は終わり、皆で晩御飯を作って食べてその日は終わりにした。




イングマルは各船長に「明日の事だけど。ここから少し上流のカーブのところに石切場があってそこに桟橋を作るんだけど岸までは水深が足りないかもしれないんだよ。



だから計りながらちょっと長い桟橋になると思うんだよ。」と言った。






アントニオ船長は「そうか?まあ現場を見ないと何とも言えんがな。しかし何で石切場なんだ?」と聞いた。





イングマルは「そこで石材を積み込んでアントウェルペンに持っていけばすぐに金にできるからね。



今日作った桟橋はまだ誰も知らないから当分は何もないからね。


しばらくは石材が商売の中心だよ。


空身で移動とかなるべくしないようにしないとね。」と言った。



  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る