第347話  桟橋作り2




船員であっても大工仕事から飯炊きまで何でも自分達でやらなければならない。




船を横付けし杭を建てて掛け声と共に船員たちがシーソーの横木を放すとハンマーの石が打ち下ろされ杭を打ち込んで行く。



杭がぶれないようにイングマルは杭を介助し横木を持つ船員と息を合わせてハンマーを打ち下ろして杭は4m間隔でどんどん打たれていった。





それと同時に別の船員が打ち込まれた杭に梁と桁材を渡たしロープで固定していく。



固定された木組みに船から板材が下ろされ順番に並べられ、流れ作業のようにしてみるみるうちに桟橋の形になっていった。





一緒に作業していると嫌でも声を掛け合い息をあわせて作業しなければならない。




段々となれてくるとみんなガキのイングマルに負けじと特に指図しされなくても段取りよく動き、夜までには1つの桟橋が出来上がっていた。







そこにジェームスがやって来て下見のつもりで来たがすでに桟橋が1つできているのを見て驚いて「なんと言う事だ!もう出来たのか?!」と言った。






イングマルはジェームスの元に行きオットー、アントニオ、エーギルの3人の船長を引き合わせ「こちらはギルドシーワゴンの船長オットー・カーン、アントニオ・グリーンウッド船長です。」


もう一人はエーギル船長です。エーギル船長は罪人護送の仕事を一緒にしました。




こちらはライオネル卿の執事ジェームスさん。


これから何かと会うことが増えると思うのでよろしくお願いいたします。」と紹介した。




みんなそれぞれ型通りの挨拶をしたがジェームスは「それにしても驚いた、最早桟橋が出来ているとは。」といつまでも桟橋を見ていた。





イングマルは「明日は少し上流にある石切場に桟橋を作りにいきます。



許可書というか指示書みたいなもんを書いてもらえませんかね?明日現場で1から説明するのが面倒なので。」と言った。





ジェームスは「わかった。すぐに作成しに館に戻ろう。」と言いイングマルも自分の馬車を下ろしてジェームスと共に館に向かった。




桟橋から館まではすぐであった。






館につくともう騎士たちの酒宴は終わっていて皆帰った後だった。






ジェームスの執務室に通されるとイングマルは「そう言えばこの前言っていた、農地面積と収穫量の書類は出来ましたでしょうか?」と聞いた。





ジェームスは「この前って?まだ今日の話であろう・・・?まあよいが・・・、これがこの地方の農地面積、こっちがここ数年の収穫物と収量、まあ概算の数字だが。」と言って書類を取り出してイングマルに渡した。






イングマルが書類を受けとり見ている間にジェームスは桟橋建設の許可書を作成していた。





イングマルは書類を見ながら「この数字は合っているのですか?」と聞いた。




ジェームスは「概算だと言ったろう、まあでもそれほどズレはないはずだ。」と言った。






イングマルは数字を見て愕然とした。



桁が間違っているのではないかと言うほど収穫量が少ないのだ。









すでに三圃式農業がヨーロッパ各地で始まっている。



農地は何年も使い続けると土地が痩せて何も収穫出来なくなってしまうので1年間家畜を放し飼いにしたり何も作らず置いて休ませる期間がある。




三圃式農業は3年に1度休耕にして麦畑→燕麦→クローバーなどの牧草をローテーションを組んで行うものだ。




全く収穫の無い期間が3年に1度なのに対し、この地方ではいまだ二圃式農業が主流であった。




二圃式農業は古代ローマ時代の農業のやり方で文字どおり2年に1度休耕にしなければならないやり方で生産性は著しく悪かった。





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