第304話 船乗り?エーギル
エーギルじいさんはイングマルの説明を聞いていたがやがて顔をしかめて「おい小僧?お前海賊に襲われるのが確実と言ってわしが引き受けると思ったのか?」と聞いた。
イングマルはキョトンとして「なにが?」みたいな顔してエーギルを見ていた。
イングマルにとっては海賊や盗賊に遭遇するのは普通の当たり前と思っているので「別にいつもの事」みたいな感じであるが普通の人々は海賊など怖くて絶対会いたくないものである。
このあたりの感覚はイングマルと一般の人とだいぶずれていた。
イングマルはエーギルじいさんの険しい表情を見て「いやいや、海賊に遭遇すると言っても僕の船は速度も小回りもいいからそんなに問題にならないよ。かわし続ければいいんで。
もう何回も海賊に遭遇しているけど全部しのいでいるよ。」と言った。
エーギルじいさんはうつろな目でイングマルを見ていたがやがて「まあいいじゃろ。
ただし!船に乗っている間はわしが船長だ!船の事ではだれの指図も受けん!それでいいなら引き受けよう、どうじゃ?」と言った。
イングマルは「わかったよ、それでいいよ。」と言った。
イングマルは「すぐ出れる?このまま馬車で船に行くけど?」と言うとエーギルじいさんは「お前馬車で来てるのか?それなら一旦家まで連れてけ、わしの荷物をとってくる。」と言って腰を上げて酒場から出ていこうとした。
だが店主の呼び止められた。
「おい、じいさん、船に乗るならツケを払って行ってもらおうか。
そのままくたばられたらたまったもんじゃねーからな!」と言った。
それを聞いてエーギルじいさんは「何言っとる?!わしを誰じゃと思っとる?!わしが船でくたばるわけ無いじゃろがッ?!」と叫んだ。
店主はそれを聞いて「そんな事わかるもんか?!昔は知らんがオレが知る限りじゃじいさんが船に乗ってるところなんか見たことないぞ?」と店主が言うとイングマルはちょっと不安になってきて「えー?そうなの?」と驚いて聞いた。
エーギルじいさんは焦って取り繕うように「大丈夫だ!体で覚えた事は何年たっても忘れるもんじゃないわい!操船なら目をつぶっていてもできるわい!」と言った。
店主は「とにかく何でもいいからツケを払ってから行ってくれ、たまりすぎだ。」と言った。
エーギルじいさんは「この仕事が終わったらちゃんと利子付けて払ったるわい!大の男がみみっちい!心配すんな!」と怒鳴ったが店主の方も「んなもん!あてにならんわ?!」と引き下がらない。
イングマルは仕方が無いので「代わりに僕が払っておくよ、いくら?」と聞いた。
店主は驚いたが帳面をめくって「丁度銀貨5枚だな。」と言った。
イングマルは小銭が無かったので金袋から金貨1枚を取り出して「これでツケと戻ってからの酒代前払いしておくよ。」と言って金貨をテーブルに置いた。
店主は喜んで金貨を受け取り「OKーOKー。帰ったら好きなだけ飲ましてやるよ。」と言った。
エーギルじいさんは満面の笑みで「ほっほっほっ。すまんの小僧。ではさっそく一杯くれんかの?」と言った。
イングマルは「仕事が先だよ。」と言ってエーギルを引っ張って店から連れ出し馬車に乗せた。
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