第305話  出発





イングマルの馬車はすぐにエーギルのぼろい家につくと「あれと・・これと・・それを袋につめろ。」と言ってイングマルに部屋を片付けさせながら袋にナイフや皮手袋などつめていった。




部屋の片づけが済むと最後にマリア像のイコンを持って家を出た。





エストブルグの町を通り過ぎイングマルの船が泊めてある漁港に来るとイングマルは手早く荷と馬車と馬を船に積み込んですぐに出港した。





エーギルじいさんはだまってうろうろしてしばらく船を観察して回っていた。





早速エーギルじいさんに船を任せてみたがまだ酔っぱらっているのか?



船も酔っ払っているようにあっちへふらふら、こっちへふらふらと何だか頼りなげであった。




イングマルは内心「大丈夫かいな?人選を間違えたかな?」と早くも思い始めていたがしばらく様子を見ようと船を任せた。





エーギルじいさんはしばらくして「小僧、この船はどこで手に入れたんだ?」と聞いてきた。




イングマルは「前に強制徴集された時、乗ってた船が難破して無人島に流されて。


そのとき僕が作ったんだよ。


これで島を脱出してきたんだ。


その後知り合いの造船所で改良してくれて今の形に仕上げてもらった。


とても気に入っているんだ。」と話した。







エーギルじいさんは黙って話を聞いていた。










イングマルはすでに戦闘のことを考えていて、確認したいことがあったのでエストブルグの港を通り過ぎさらに北に向かって行った。



それからスベン河にたどり着き河口をさかのぼって行った。





慎重にゆっくりと岸を観察しながら進み、この前に下見していた近くに来ると停船し、カヌーを降ろしてもっと注意深く岸を観察し水深を測りながら進んで行った。



しばらくして船を直接岸に着けれる岩のある深い淵を見つけた。



「ここがいい。」と言って船を移動させ岩場に船を付けそこから上陸した。




馬車と馬をマストクレーンで降ろした。




イングマルは「やっぱり思った通りだった。ここからなら旦那さんの屋敷まですぐだ。」と言った。





イングマルは「エーギルじいさん、しばらくここで待機しててくれる?」と言いすぐに馬車でライオネル卿の館に向かった。





ジェームスも役人のオスカーも屋敷に戻っていたがそんなに間を置かずにイングマルが現れたので二人とも少し驚いていた。




イングマルはジェームスに屋敷のすぐ北のスベン河の岸に船を泊めてあるので罪人はすぐにたどり着け船に乗せれることを話した。







イングマルは「これで大分時間稼ぎができるよ。


夜中に罪人を船に乗せて出発して次の日くらいに空の護送馬車を陸路で出発させるんだ。


この偽の護送馬車に賊が食いつくまでかなり時間稼ぎができる。



ばれても陸路の伝令より船の方が速いから、奴らが知らせを受けるころには裁判所にたどり着いているって寸法だよ。」と言った。



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