第293話  ギルド「シーワゴン」




二つの海賊団は海賊島にあったストックの船を探したがどれも一長一短で今までのような良い船はなかった。



どれも大きすぎるか小さすぎる。




サイズが良くても速度が遅かったり操作性が悪かったりした。




最も良いと思われた船は中型船で速度は速くていいのだが操作するのに人手が掛かった。




二つの海賊団「シーウルフ」と「シーリッパー」はそれぞれ30人程の海賊団で一つの団で動かすには少々手が足りない。





そこで二つの海賊は共同でこの中型船を動かすことにした。




高速の中型商船だったこの船は60人近い海賊船となった。







試運転がてら出港したがすぐに問題が出てきた。



船頭多くしてなんとやらですぐに二つの海賊はもめ始めた。






それぞれの海賊はお互いに自分達のリーダーが船長と思っているので自分たちのリーダーの言うことしか聞かず些細なことでケンカばかりするようになっていた。




それでもケンカしながらも一緒に行動しているのは早く再起したい思いと復讐心が支えとなっていたからだった。













ジョンたちは皆で話し合い新しいギルド「シーワゴン」を立ち上げた。



旗もつくり紺色の地に白い荷馬車のシルエット模様である。




ジョンたちが乗る鹵獲したジーベックの船は「リバティ・コンティネント号」と名付けられた。



海賊から取り返した元々の船は「グレート・パッション号」である。





イングマルの船は以前無人島で名付けた「ノイエ・カール・ド・ルシュキ号」のままである。





それぞれの船にはギルドの旗と自分たちの好みの旗を一緒に掲げている。






ギルドを立ち上げた当初、元海賊船だったこともあり話題にはなっていたが警戒されてなかなか仕事が無かった。




「仲間に入れ」という他のギルドもなく「海賊たちからすぐに報復されるだろう。」と思われていた。




さらにアントウェルペンの町にエストブルグの会頭らから忠告文が届き「彼らの相手をするな!」という内容で他のギルドが警戒する要因となっていた。










貿易の仕事をするからには究極の目標は自分で商品を選び仕入れ運んで売る。


ただ当てずっぽうにものを運んでも当然うまくいくわけはない。


馬車の時も同じだがその土地の需要と供給をよく見極めなければならない。



そのため情報は何よりも大事である。


ジョンたちも皆、町で情報を仕入れ何をどこに運ぶかでいつも頭を悩ませている。






だが本格的に自分たちでやるには商品を仕入れるため莫大な資金が必要で今の彼らにはそんな余裕はない。


そのため他の人の荷を運ぶ運送の仕事がメインとなるが肝心の運送の仕事がなかなかない。








だがこのアントウェルペンは低地にあり港を作るには向いているが町を作るにはかさ上げしなくてはならず町の石材の需要は絶えることがなかった。




何を運んでいいか分からない時は石材を運んでくれば必ず売れた。



単価は安くとも地道にやれば長続きできる。










ギルド「シーワゴン」に初めて仕事が来て織物や食料品を運び、帰りは織物原料、石炭、石材、鉄鉱石などを運んだ。



だがイングマルには護衛という重要な役割があるのであまり重いものは載せれない。


それでも馬車の何倍もの商品を載せることが出来るのでイングマルは気にしていなかった。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る