第294話 船の仕事
ギルド「シーワゴン」を立ち上げ初の仕事は無事何事もなく済んだ。
その後も順調に仕事が続いた。
アントウェルペンから織物、樽材等をバーデンスブルグ、エストブルグ港に運び入れ、帰りは石材やアマニ油、織物原料、鉱石などを運んだ。
これらはごく普通の一般的なものでどのギルドも行っているので利幅は薄いが確実で堅実だった。
皆忙しく仕事をしているが充実していた。
新しい船員も奴隷みたいな暮らしから元の船員に戻れたので嬉しくて張り切っている。
イングマルは護衛役なのでほとんど積み荷は無いのだがそのことを理解していない者たちから見れば何もしないでブラブラしているように見える。
事情を知らない新人の船員たちは特にそのように思っていた。
ごくごくたまにイングマルが単独で行くときもあった。
ほんの1、2回だったのだがジェームスの知り合いを運んだりした。
そんな時は護衛できないので他の船は休みだが実際は荷の揚げ降ろしで忙しく休んでいる間はなかった。
「シーワゴン」のことが巷に伝わると海賊たちもマークするようになり実際海上で少し追跡されたことがある。
皆緊張したがイングマルが海賊船に向かっていくとすぐに逃げてしまって何事もなかった。
海賊たちは仲間といるときは皆「リベンジだ!」と勇ましいことを叫ぶが実際行動しようとはしなかった。
特に船を焼かれた2つの海賊団は復讐心に燃えながらも命乞いをして見逃してもらったことが魂に刻み込まれ恐怖心からか体が行動しようとしなかった。
何かと出来ない理由を作って言い訳ばかりしていた。
だがメンツの塊のような彼らは今の自分たちを「根性なしと皆思っている。」と自分で勝手に思い込むようになるといたたまれない気持ちになった。
気ばかり焦ってしまいイングマルへの有効な対処方法もないのに無理やり自身を鼓舞して出撃し「シーワゴン」を遠くから追跡した。
しかしイングマルの船が見えた途端に恥もメンツも捨てて一目散に逃げるのであった。
そんなことが何度かあったがその他は順調に進んでいた。
皆仕事にも慣れてきて気持ちに余裕が出てくるとすぐ逃げる海賊船をあざ笑いはやし立てた。
そのうちイングマルの船がたいして荷も積んでいないのに手間賃が皆と同じというのに不満がたまってきていて文句を言う者が出てきた。
新人の船員たちはイングマルのことを知らないので当然である。
護衛についても、その後一度も戦闘になったことが無く「遠くから眺めているだけで楽ちんな仕事だ。」などと考えていた。
どんなものでもそうだが安全のための装置はそれが必要としない時は余分なアタッチメント、邪魔なものと考えるか?
絶対必要な仕様と考えるか?
この違いは根本的で決定的な違いがある。
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