第292話  海軍と海賊の事後




エストブルグ港でイングマルたちをエサにして海賊退治をしようとした海軍はどうなったか?




海軍の立てた作戦はエサのイングマルたちが海賊に食われ襲われている所をその外側から包囲し海賊たち全てをせん滅する予定であった。



しかしイングマルたちはさっさと逃げ出し海賊もそれを追ってあっという間に離れて行ってしまった。






軍艦は急いで後を追おうとしたが港の狭い中で大小の艦艇が並んで身動きが取れなくなってしまった。




しかも一番大きくて動きの悪い軍艦が港の外側に並んでいたので他の艦が港外に出れず、強引に出ようとした艦を避けようとして中小の艦が衝突してしまった。


さらに慌ててそれらを避けようとした他の艦艇3隻が暗礁に乗り上げて一隻が損傷大破し、2隻が転覆沈没してしまった。



結局次の日まで港は混乱した軍艦で塞がったままで他の船は出入りする事が出来なかった。



何もしないまま損害だけだして海軍は町中から批難され、提督はその後査問委員会で糾弾されてしまった。



それでも何とか解任はまぬがれた。







訓練もろくに出来ていない大艦隊の運用など簡単にできるものではなかった。


これは自走できる現代の船でも同じである。


ましてや風任せの帆船で狭い港湾内ならばならなおさらであった。







解任は免れたとはいえ信用を失った提督の下では士気は大きく低下し、提督自身も慎重を通り越して消極的になり海軍の目立った活動は無くなり、これ幸いと海賊の活動は活発になって行くのであった。











一方の海賊たちは「黒い矢」は消滅したが3つの海賊は全員健在である。


船2隻は焼失したが乗組員は全員救助されたので船さえあれば再び活動できる。





「海賊島に戻ってストックの中からいい船を選んで再起すればいい。」


船を失った2つの海賊たちは皆そう考えていた。






ずいぶん遅れてたどり着いた武装商船6隻と生き残りの海賊船はイングマルたちの追跡を断念し海賊島に帰ってきた。








海賊島でイングマルたちの討伐を指示した総合商会のボスは報告を聞いて憤慨し「無能者!!ボンクラども!!」と悪態の限りをののしり怒鳴り散らした。



船を失った2隻の海賊船の船長キャプテン・クラークとハインツ・バーグマンは批難を歯を食いしばって黙って聞いていた。





だが船の保証の事について話し出すと総合商会のボスは「知るか!!お前たちが失敗したんだろう?!何でワシが面倒見なけりゃならん?!ワシには関係ないことだ!!」と叫んだ。



船長らはそれを聞いて顔を真っ赤にして立ち上がり「何言ってる?!この仕事はあんたが言い出した事だろう?!関係ないとは何だ?!!」と机を叩いて怒鳴り、怒りでブルブル体が震えた。




場は険悪なムードになり海賊たちと総合商会の用心棒たちと今にも斬りあいになりそうだった。




海賊が奪った船や積み荷はほとんど総合商会がまとめて買い上げ、ストックの船も今は総合商会の物であった。




他の船長たちが間に入って「まあ、まあ。」と両者をなだめた。







総合商会のボスはタダで船を提供することになかなか同意せず、結局「仕事が成功したら船代は報酬から差し引き、それまでは貸しにする。」ということで両者は合意した。





  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る