第285話 海上の戦闘3
彼らは通常の矢のほかに火矢も放ってきた。
火矢は矢の先に油をしみこませた布が巻き付けてあるので空気抵抗が大きく飛んでくる矢の速度は遅く、飛んでくる矢は余裕で見えたので簡単にかわす事が出来た。
2隻のジーベックの海賊船は連携してイングマルの船を挟み込むように近づいてきた。
何度もかわしているが彼らは慎重に近づいてそのままイングマルの船を挟み込んで押し潰そうとし、急接近してきた。
イングマルは船を右に急旋回させ、それと同時に帆を固定しているロープをすべて解き放った。
めいいっぱい風を受け止めていた帆が解放されて風にたなびき、船は力を失い急ブレーキが掛かったようになって横滑りした。
2隻のジーベックはイングマルの船に体当たりしようと互いの方向に向けて舵を切っていたのでいきなりすっぽ抜けたイングマルの船を置いて互いに衝突してしまった。
ギリギリで回避行動をとったが間に合わず惰力で衝突してしまった。
船体にはほとんど損傷無かったがお互いのマストのヤードが絡まり離れなくなり止まってしまった。
イングマルは再び帆を張り直し右旋回しながら左側にいたジーベックに後ろから近づいた。
海賊船の乗組員は必死になって船を離そうとしていて大騒ぎだった。
イングマルは20ℓの油の入った樽を用意しロープに結ぶと砲丸投げのようにしてクルクル回転しながら樽をジーベックの船に向けて放り投げた。
樽がジーベックの船の上空にきた所をクロスボウで撃った。
空中ではじけ散った樽は中の油が海賊船に降り注ぎ火矢のために用意されていたたいまつの炎に引火し「ボンッ!」という音と共に辺りは炎につつまれた。
帆はあっという間に燃え上がりマストは火柱につつまれた。
イングマルの船はそのまま横を通り抜けさらに右旋回してもう一隻の右側のジーベックに近づいた
同じように油樽をロープで結びジーベックに向けて放り投げた。
クロスボウを放って樽に命中させると今度ははじけることなくそのまま樽の側板を打ち抜いたまま甲板に落ちて転がった。
同じようにたいまつの炎に引火して船の中央付近から炎が上がった。
この間わずか数分の出来事であった。
ジーベックの乗組員は必死で消火作業をしていたが船にとって何よりも危険なのは火でありそれは現代の船でも同じである。
まして木造船は何よりも注意しなければならないことなのに海賊船は無警戒に甲板の至る所でたいまつを上げていた。
結局消火作業は間に合わず手の施しようが無かった。
乗組員は次々と浮かぶものを手あたり次第に海に放り投げ自身も海に飛び込んだ。
遅れてたどり着いた3隻目のジーベックは炎が上がるのを見て「相手を殺った!」と初め思ったが仲間の船とわかると驚いて船を近づけた。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます