第268話  船乗りの信念





ジョンは「そう言えばお前は何でここにいるんだ?たしか前に強制徴集されて船員として働かされていると聞いたが?」とイングマルに聞いた。




イングマルは「そうなんだよ。その後水兵として軍艦に乗ってその船が沈没してしまったのでやっとお役ごめんになって、今は自分の船で商いしてこの港に来たんだよ。またすぐにエストブルグに戻ることになると思うけど。」と話した。



ジョンはイングマルの「自分の船」と言うのに大きく反応して「お前!自分の船を持っているのか?!」と食い付いてきた。





イングマルは「う、うん、あるよ自分で作ったのが。前に作ったのよりも小さいけど。」と言った。




ジョンは膝まついて両手を合わせておがむようにして「た、頼む!オレを船に乗せてくれ!雇ってくれ!」と言ってきた。




イングマルは「えー無理だよ、まだ商い始めたばかりで人を雇う余裕なんかないよ。」と言った。




しかしジョンは「た、頼むオレは船でしか生きれないんだ。他の暮らしなんか出来ないんだ!」と叫んで再びイングマルにすがってきた。




イングマルは困ってしまったが少し考えて「う~ん、僕の船は一人で操作出来るので人は要らないけど奪われた船を取り返すなら手伝うよ。」と言った。







ジョンはそれを聞いてキョトンとしてイングマルを見た。


こいつはおかしいのか?




海賊に奪われた船を取り返すなど考えた事もなかったからだ。


海賊にケンカ売るなんて海軍ぐらいしか出来ないことで、その海軍でさえ対応に苦労しているのに個人が出来る訳がないと思った。







イングマルは「どう?本当に大事なものなら命をかける覚悟はある?」とジョンに聞いた。



ただの口先だけでも蛮勇でも猪突でもない。



静かで穏やかな中に絶対に揺るぎない信念みたいなものを感じた。







ジョンはイングマルを見つめて「本気なんだな・・・・・。」とつぶやいた。



イングマルは「うん、僕はいつでも本気だよ。本物しかいらない。」と言った。







ジョンは「わかった、やる。オレの船を取り返す。手を貸してくれ。」と言った。




イングマルはニッコリ微笑んで「わかったよ。手伝うよ。」と言った。






ジョンは「仲間にも話しておく」と言って一旦別れた。








イングマルは用事から戻ってきたジェームスを乗せてエストブルグに帰航した。




ジェームスには「用事でアントウェルペンへもう一度行ってくる。ひょっとすると何週間か戻れないかもしれない。」と伝えた。




ジェームスは「そうか?なんだか知らないが気をつけろよ。」と言った。




イングマルは「ありがとう。戻ったら総合事務所の掲示板に案内を出しとくよ。」と言ってジェームスと別れすぐにアントウェルペンに向けて出航した。






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