第239話 戦闘後
イングマルは弓兵に狙いを付けるとクロスボウを放った。
弓兵は矢をつがえていた所で左腕を貫通し右足の太ももに突き刺さった。
マストから落ちそうになっていたが何とか踏みと止まっていた。
イングマルのいるところは甲板から見るとほとんど真上で太陽が眩しくてイングマルの姿は見えなかった。
イングマルはクロスボウを装填すると今度は海賊船の船長に矢を放った。
海賊船の船長の左肩から背中に矢が抜けて途中で止まった。
次にイングマルはクロスボウを装填すると最前線で指揮していた戦闘隊長らしき屈強な男を狙って矢を放った。
左目に命中し戦闘隊長は転げ回って悶え苦しんだ。
イングマルは3本しか矢が無かったのでマストから降りてきて再び元の持ち場に戻った。
イングマルの放ったたった3本の矢で戦況の流れがガラッと変わり海賊たちははじめの勢いが無くなり浮き足立つようになった。
船の半分以上占領されていたのに海賊たちは引き始めた。
海賊たちは退却の合図で一斉に潮が引くように戻っていった。
彼らは優秀なようで引くときは何の未練もなくさっさと戻り足場板を外しフックを外すとあっという間に離れて行った。
みんな追撃どころではなく「助かったー!」と安堵しているだけだった。
甲板は血に染まり多数の負傷者で埋め尽くされていた。
すぐにバケツで海水を汲み上げブラシで甲板掃除をはじめた。
掃除した所から負傷者を横たえ並べていった。
医務室には入りきらないためだった。
数を数えて深刻な状況が明らかとなった。
戦死8名重傷55名軽傷38名に上った。
海兵隊員のほとんど全員が負傷しこの船の戦闘力は無くなってしまった。
イングマルたち非戦闘員は忙しく走り回り、船の操作だけでなく負傷者の看護もしなければならず休む間もなかった。
艦の全員気落ちしてもはや士気などなくなっていた。
艦長の立場は微妙なものになりつつあった。
前回の海賊船との勝利など完全にご破算となってしまい誰が見ても敗北だった。
この艦は自身が罠として存在し敵が入ってくることでこれを撃退し戦果を収める。
だが罠が機能していないとなると自身が獲物となってしまう。
艦のスピードも遅く万が一で逃げることも出来ない。
何度かの成功が慎重さや万が一の備えを怠り油断し敵をあなどるという事態になってしまった。
イングマル個人は今度の危機に陥ったことを別に気にしていなかった。
誰が悪いとか責任は?とか非難という感情は持っていなかった。
だが他の者はそうはいかなかった。
とくに艦長自身が自身の責任を感じなんとかごまかすか?責任転嫁するか?挽回するか?とあれこれ思案していた。
他の乗組員達も黙ってはいたが不満が溜まっており誰かのせいにしたがった。
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