第231話  軍艦カール・ド・ルシュキ号




当直の作業中マストに上って帆を張る作業をしていたら遠方に船が見えた。



イングマルは降りて来るように言われマストから降りてきた。




すぐに手かせ足かせをつけられてマストに鎖で繋がれた。




「まだ作業時間なのになぜだろう?」と思っていると船はどんどん先程の船に向かって行く。



船内はにわかに慌ただしくなった。




海賊たちは完全武装になり舷側の内側に隠れたり帆の裏側に隠れたりして他の船から海賊たちが見えないようにしていた。



甲板には数人の一般の船員しか見えない。




海賊船は普段は普通の商船にしか見えない。




旗も普通の国旗や商人ギルドの旗を掲げている。






海賊たちは先程の船に狙いをつけて襲うのである。




相手の船がよく見えるようになると向こうも商船のようであった。



中型の商船のようでスピードは遅かった。






海賊船は相手の船を追い越しつつ舵を大きくとり相手の船首に体当たりした。



カギ爪のフックを相手の船の舷側に引っ掛けすぐに斬り込み隊が突入した。




奇襲は成功と思われたが相手も積み荷のシートの影や帆の裏側に海兵が隠れていてすぐに彼らが四方から現れて白兵戦となった。



相手は数が多く次々と現れてすぐに斬り込み隊は不利になってきて船長は退却を命じた。



だが相手の別動隊が逆に海賊船にフックを掛けて乗り込んできた。




相手の船には海兵が多くいて次々に海賊船に乗り込んできて結局両方の船の海賊たちは制圧されてしまった。




イングマルはマストに繋がれて一部始終を座って眺めていたが海兵はイングマルを一瞥すると無視して武器を持っている者達を優先して襲っていった。



一時間もしないうちに戦いは終わり生き残りは手を上げて降伏した。




海賊は全員縛られ相手の船に移送された。






相手の船は商船ではなく商船にカモフラージュした軍艦カール・ド・ルシュキ号であった。



海兵隊は150人も乗っていて海賊退治専門に出動してきたのであった。



船内には牢屋もあった。








海賊船に艦長が乗り込んできて船を眺めていた。




すっかり忘れられていたイングマルを見つけると「何だお前は?」と言ってきた。



イングマルはこれまでのいきさつを話すと造船所に帰してもらえるものと思ったが艦長は別にどうでもいいような表情で兵曹長を呼びつけるとイングマルの手かせ足かせを外させた。



その後カール・ド・ルシュキ号に乗せられ有無を言わせず書類にサインをさせて水兵にさせられた。



イングマルは文句を言って「遭難者として保護してくれ」と言ったが無視された。



兵曹長は「貴族ならともかくお前みたいなのをただ飯食わせる分けないだろう!どうせ港についても強制徴募されるだけだ。手間が省けたと言うもんだ。」とめんどくさそうに言った。



「それよりお前の乗っていた商船はサケード号だな?船長はどうしたんだ?」と兵曹長は聞いた。




「船長や航海長は海賊島で下ろされた。その後はどうなったか知らない。」と答えた。



「そうか。まあ身代金を払えば解放されるだろう。我々の任務は海賊退治で人質救出ではないからな。」と書類を書きながらぶっきらぼうに答えた。




副官に「班長を呼べ!」と言うと程なく水夫長がやって来て「新入りだ、面倒みろ。」と命令した。



水夫長は「はッ!」と言うとイングマルの首根っこをつかんで水夫溜まりに連れていかれた。




  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る