第230話 銀貨5枚の奴隷船員
海賊のアジトは島でアジトというより島の港町が半ば独立した都市国家となっている。
この島は完全な自由が法となっていて窃盗殺人誘拐、何をしても罪に問われることはない。
一見すると無茶苦茶で乱暴者で腕っぷしの強い者が支配者となりそうなのだが
人に嫌なことをすればたちまち毒殺、暗殺、なぶり殺しの対象になってしまう。
窃盗誘拐殺人も当然返り討ちにあっても罪にならないので逆に治安は悪くはなかった。
海賊が強奪した積み荷はここでさばかれる。
盗品だろうが拾った物であろうが何でも商品として扱える。
ここに行けば手に入らないものはないと言われていた。
もちろん人間も例外ではない。
そのためこの島には多くの商人や海賊が出入りしている。
イングマルたちは船に留め置かれ上陸はさせてもらえなかった。
どうやら船とセットで売りに出すようだった。
全員逃げ出さないように手かせ足かせをつけられてようやく上陸を果たし市場につれてこられ他の乗組員とともに奴隷として売られることになった。
イングマルは若くて丈夫そうなのですぐに海賊に売れた。
わずか銀貨5枚であった。
イングマルたちを襲ったのとは別の海賊であった。
割りと大きな集団のようで船も前のより大きかった。
町をゆっくり見物することも出来ず、すぐに船にのせられ翌朝出港した。
海賊の仲間になったわけでは無いので当直以外の時は勝手なことをしないように手かせ足かせをつけられマストに鎖でつながれたままだった。
他に奴隷として買われた者も同じように繋がれていた。
しかしひとりの男が「仲間にしてくれ」と申し出た。
船長は「良いだろう」と言って男を解放した。
「他にも仲間になりたい奴は解放してやるぞ。」と船長が言うとポツリポツリと手を挙げ始め結局イングマル以外はみんな解放された。
「お前は良いのか?」と船長はイングマルを見ながら言った。
「僕はいいです。」とイングマルは言うと「フン、強情だな。いつまでそうしてられるかな?」というと向こうへ行ってしまった。
イングマルは繋がれたまま船の構造や乗組員の個性をよく観察していた。
作業の時は手かせ足かせは外されてずっと作業を続けた。
奴隷の立場とは言え作業の手を抜くことはなく、誰よりもきちんと真面目に作業をこなしていたがそれ以外はマストに繋がれて海賊たちはイングマルをからかいわざと届かないところに飯を置いたり、寝ている所に海水をぶっかけたりとしょうもない嫌がらせをしていた。
海賊は商船の航路、船や積み荷の種類などの情報を島に居たときに入手しよく知っていて航路から少し外れた所で待ち伏せしている。
狙いの船が通るのを見計らって近付いていくのだが、いつもいつも襲撃が成功するとは限らない。
接近出来ても海兵隊が多く乗っていたり護衛の軍艦がいたり、相手の船に乗り込んでも白兵戦でやられたりとリスクも多い。
不利と判断したら仲間が残っているのに見捨てて急いで離脱することもある。
そのため海賊船の多くは小型でスピードの早い船が多かった。
それでもイングマルの作った船よりは大きくてスピードはイングマルの船の方が速かった。
イングマルは「これからの船はスピード優先が必須だな。」と思い、鎖に繋がれながらも将来作る船の構想を考えて一人上機嫌であった。
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