第208話 大抗争
三者のギャング団のリーダーはそれぞれのアジトに帰り幹部連中を集めて今後のことを話し合った。
造船所の連中がいる限り何をしようともムダだとわかっている。
彼らと関わらずにすむ方法を考えて三者とも同じことを考え、早速行動を開始して準備を整えた。
彼らの選択は最悪のものだった。
それは自分達が生き残るために他の二つのギャング団を殲滅するのである。
しかも今回は戦闘員ではない小さな女の子もにも武器を持たせて全員参加させた。
偶然にも同じ日に実行することが決まった。
2手に別れて相手のアジトに襲撃に向かうが相手も出掛けていてアジトはがら空きだった。
アジトを徹底的に破壊して火を放った。
アジトだけでなく彼らの配下の商店や倉庫も破壊して火を放った。
彼らは奇声を上げて自分達の勝利を叫んでいたが、帰りに三者はほぼ同時に中央広場で遭遇した。
しばらくにらみ合いが続き互いに相手を罵っていたが、とうとう乱闘となった。
幹部連中や戦闘員達はまだ怪我が治りきっていないので包帯だらけであった。
しかし彼らどうしなら互角の戦いができる。
乱闘となって自分より弱い相手を選んでいたが小さな子は怖がって戦いにはならず一方的に叩かれて逃げ回っていた。
イングマルはすでに休んで床に就いていたが、夜中に教会の鐘が鳴り響いたので「なんだろう」と飛び起きた。
町の方の空がオレンジ色に輝いていた。
「火事か?」皆も起きてきて町の方を眺めた。
イングマルは念のため完全武装になって「ちょっと見てくる!」と言って馬車で出掛けた。
親方も皆も「おい!あまり無茶をするなよ!」と声をかけた。
イングマルは町に近づくと火事の方向がギャング団のアジトに近いことから「これはもしや?」と嫌な予感がした。
狼団のアジトの前に来るとアジトはすっかり焼け落ち周辺の家屋まで延焼していた。
近所の人々が避難する人の怒号や悲鳴で周辺はパニックになっていた。
どうすることもできず辺りを見回すと狼団の小さな子らが集まって泣いていた。
近づいて見ると全員傷だらけアザだらけであった。
「どうしたんだいったい?」と声をかけると子供らは見覚えのある造船所の渡職人だったので安心して皆泣きじゃくってイングマルにすがり付いた。
とりあえず皆を馬車に乗せて造船所に連れていった。
親方は「どうしたんだこれは?!」と言ったがイングマルは皆をとりあえず飯場に入れてアンリとクレインに子供らの手当を頼んで自分はすぐまた馬車にのって出掛けた。
獅子団とドラゴン団のアジトも焼けており周辺の家屋も同じように延焼していた。
アジト周辺の隅っこにそれぞれの団の子供らが集まって泣いており、誰も助けることもなくそれどころか「火災の首謀者だ!」と罵る者や石を投げつける者達がいた。
イングマルは何度も往復して全員を馬車に乗せて造船所に運んだ。
飯場は子供らで一杯になった。
はじめは敵対するギャング団を怖がっていたが、すぐそんなものは消えてしまった。
子供らにはなんの敵愾心もはじめから無かったのである。
リーダーと幹部連中だけが対立していただけだった。
皆を手当して幸い命に関わるような者はいなかった。
少し落ち着いてからようやく詳細を聞き出した。
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