第177話  攻勢






皆ブレンダを取り囲んで喜んでねぎらい、イングマルはブレンダからジャンポールの土産を受け取り、その内容を見てブレンダに飛びついて喜び自分たちの勝利を確信した。









ニコラス配下の50人の偵察部隊は第1補給ルートの安全を確保すべく出動したが、数時間して街道横の林からいきなりクロスボウの攻撃を受けた。




兵たちは慌てて林と反対の平原の方へちりじりに走って逃げ出したが、待ち構えていた騎兵数十騎に取り囲まれてしまい、一人ずつクロスボウで射倒されてしまった。




このようにして、いつも背後にやってくる偵察も斥候も全て討ち取られてしまっていた。




補給物資は全て没収されており、ニコラスの軍は一つの補給ルートを残すのみとなり備蓄は早くも底をつきはじめていた。




森の中の兵たちは細々としか入ってこない食料をみんなで奪い合うようになり、兵達は各村の出身者同士で固まり他の村のものとは反目し合うようになっていった。




ニコラスとも歪み合うようになっていて、とうとう食料の補給ができないことが分かると、全軍が動揺することとなった。




各村の出身の代表が各部隊長となっていたが、食料が手に入らなければこのまま何もしないまま全軍崩壊してしまう。




村の代表らはくじを引き、順番に攻勢に出ることにした。



損害に関係なく、連続して攻めることを決めた。










イングマルはジャンポールの書類をよく読んで、各村の個性を理解した。



みんなにもよく読んでもらったが、単に村人の名簿で戦いに役に立つとは思えなかった。










とうとう彼らはやってきた。


結局、追い詰められたのは彼らの方だった。




村の旗印とざっと見た人数で、初めの攻め手はリーワーズの村とイングマルは理解した。



名簿では約650名。





以前にイングマルが滅ぼした村の手本となった村で、ほぼ同時期に人買いと結託し、5年ほど前から人身売買を始めた。




彼らは森の大木を切り倒し、堀を超える橋を作り土橋の横に平行にかけようとしている。




柵の向こうにやぐらを立てて、やぐらの上から木橋の端にロープをかけて、少しずつ橋をせり出してくる。





イングマルはキャロルを呼んで、一緒にバリスタという大型のクロスボウを持ってきて橋がかかろうとしている手前に据えた。




強力なバリスタに装填した矢の先は よく研ぎあげられ、Y の字になっている。



キャロルに射撃を任せた。




あともう少しでこちらに届き、橋がかかろうというところでバリスタが発射され、腕よりも太いロープが切れた。



バランスを崩した橋が斜めに歪んだが、もう一本のロープでかろうじて保たれている。



兵たちは急いで橋をかけようと大声を出して橋を押し出してくるが、その間にバリスタが再び発射されもう一本のロープも切断された。



橋は轟音とともに堀に崩れ落ち、その衝撃と反動でやぐらも倒れてしまった。




数十人の作業をしていた者が一緒に堀に落ち、盾の崩れた所にクロスボウが注ぎ込まれた。




堀を必死によじ登ろうとするものも、すぐにクロスボウの的になった。




それでも彼らは諦めようとはせず、もう2回も同じようにして橋をかけようとしたがすべてキャロルのバリスタによって阻止された。



これらの失敗だけで、100人以上の死傷者を出してしまった。






橋をかける作業と同時に正面の土橋をわたって攻撃を仕掛けてくるが、これも全て撃退される。



リーワーズの村の兵はすでに半分以上死傷している。




それでもやめようとしなかった。








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