第169話 禍根2
よく朝早く出発し、もうすぐ街に到着するときになって街道の前後から盗賊団がやってきて挟まれてしまった。
「止まれ!ヨアキム!出てこい!そこにいるのはわかってんだ!」
「俺たちの仲間にならないならお前はもう用済みだ、死んでもらうぜ!」
「馬車の連中も聞いているか?命が惜しければヨアキムを引き渡せ!娘も一緒にだ!」と盗賊団は叫んだ。
馬車は無反応だった。
「わかってんのか!そいつは盗賊だ、かくまうならお前らも容赦しないぞ!」
と続けた。
このセリフだけ聞いていると、イングマルたちは盗賊をかくまう悪者に聞える。
「人違いだ!ここにはそんな奴はいない。お門違いだ。うせな!」とローズが叫んだ。
「お前らのことはずっとつけてきたんだ!間違うはずねーんだ!」
「この場をしのいだとしても無駄だぞ!どうせ町に入っても盗賊の一味としてすぐバラしてやる。」
「バレて娘と一緒に吊るされるだけだぞ!」
狡猾そうな男は勝ち誇ったように叫んだ。
ヨアキムはそれを聞いてがっくりして、早くも諦めてしまったようだ。
街にたどり着いても遅かれ早かれ、彼らがヨアキムの素性を言いふらすに決まっている。
やはり過去の過ちは、いつか必ず報いを受ける日がくる。
ヨアキムはうつむいていたが、自分はどうなってもいいが娘だけはまっとうな暮らしをさせてやりたかった。
ヨアキムはイングマル達に泣いてすがり、娘のことを頼んだ。
それを見ていた娘が小さいながら状況を察して、泣きながら皆に「父を助けて!」と頼んできた。
ローズもフランシスもみんなも、初めからそのつもりだった。
イングマルはみんなが何も言わなくとも次の行動に入っているのを見て、素直に喜んだ。
今回はみんなの行動を観察するつもりで、口も手も出さずにいようと思った。
全員はやばやと完全武装になり、クロスボウを装填している。
馬車は円陣を組み、騎射のものは馬に乗り込んだ。
盗賊団は馬車の様子がおかしいことにようやく気づいて「お前ら何の真似だ!どういうつもりだ!」と叫んだ。
彼らは、まさか戦うなどと思ってもいなかった。
ローズは「お前たち!ヨアキムが欲しいんだろ!どうしても欲しけりゃ、命がけで取りに来な!」と叫んだ。
盗賊団は「くっそー、なめやがって!」と剣を抜いて一斉に襲いかかろうとしたが、逆に盗賊団が騎射の者達に襲われた。
数の少ない後ろのほうの集団に、騎射の者たち6騎が襲いかかった。
盗賊団の周りを2周する間に彼らの集団は全員矢を受け、さらに前方に回り込み馬車からのクロスボウの攻撃と合わさって、あっという間に彼らを倒してしまった。
ヨアキムも盗賊団も何が起こったかも理解できなかった。
みんな手加減して、急所を外したので死んだ者はいなかった。
うずくまったり、もだえ苦しむ盗賊団を見ながらローズは「今回は見逃してやる。二度とヨアキムに構うんじゃないよ!」と宣言するように言った。
一行はそのまま何事もなかったかのように立ち去った。
盗賊団は圧倒的な力の差の前に一言も発することができず、ただ見送るしかできなかった。
一行はすぐ町に到着した。
が、盗賊団を撃退しても誰かに密告されればすぐ捕らえられてしまう。
ヨアキムは「良かったら一緒に旅を続けさせてくれないか?」とみんなに頼んできた。
ローズもフランシスも以前イングマルが新しい仲間を作るのをいやがっていたのでイングマルを見たが、イングマルはレオンが買ってきたガチョウの雛を懐に入れて温めるのに忙しくしながら「みんなのしたいようにすればいいよ。」と答えた。
皆でヨアキムを歓迎し、娘も無邪気に喜んだ。
新しくヨアキムを仲間にくわえ、街で物資を補充し再び出発した。
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