第165話 ジェシカの帰還
どんなに残念な結果に終わろうとこの一行はへこたれる事がない。
皆の雰囲気や環境、日々の訓練がそうさせるのか?
エルザもエリザベートもすぐいつものように戻り、一行は次のジェシカの村へ向かった。
ジェシカの村は随分田舎で、深い森に囲まれていた。
古くから化け物や悪魔や魔女が出る、といろいろ伝説がある。
ジェシカの家にたどりつくと村も両親も無事であった。
村人も両親もすごく喜んでいた。
みんなをもてなしてくれて、ここしばらく残念な結末が続いていたのでほっとした。
ジェシカと別れて一行は、次の村に向けて出発した。
しばらくしてすれ違った人に「ジェシカの村からやってきた」と話をすると「やはり逃げてきたのか?」と気の毒がられた。
皆キョトンとして「どういうことか?」と話を聞くと口ごもっていたがやっと重い口を開き「ジェシカの村には化け物が出て、村の若い娘を生贄にさしださねば村が滅ぼされる。」という。
「生贄にする娘を誰にするかと相談しているところだ。」とのことである。
「化け物とは何か?盗賊団や人買い団では無いのか?」と聞くと、「人では無い、古い伝承にある化け物だ。」という。
詳しくはわからない。
村ではそんなこと一言も言ってなかった。
「まさか!死んだと思っていたジェシカが帰ってきて、これ幸いと生贄にするつもりでは?!」とよく当たるイヤな予感がしてイングマルは焦った。
皆はすぐ村に引き返した。
ジェシカは食事に眠り薬を混ぜられ眠らされ、眠りから覚めると縛られていてどこかに運ばれていた。
白い死装束を着せられていた。
目を覚ますと「これは何?!どうなっているの?!」と騒いだ。
「目を覚ましたか?ジェシカ。」
「何!どうしたの?!何が起こったの?!お父さん、お母さん!」
「お前は村のために、これから山の主に供物として捧げるのだよ。」
「は?!どういうこと?!山の主って何なの?!やめて!はなして!」
「よくお聞き。山の主がおこると、村が滅ぼされかねないからね。
そうならないように、娘と食べ物を捧げるのだよ。
そしたら村が無事だからね。」
「お前は立派に村のために役立ってくれて、お父さんもお母さんも、とても嬉しいよ。
お前は私たちの誇りだよ。」
そう言うと良いことをしているつもりのように満足そうに微笑んだ。
「やめて!誰か!助けて!」ジェシカは騒いで暴れ出した。
「おとなしくしなさい。あんまり騒ぐと山の主が機嫌を損ねるといけないからね。」そう言うと目隠しと猿轡をされた。
ほどなくして山のなかの泉の近くに設けられた祭壇に到着し、ジェシカを台の上に載せ杭に縛りつけた。
食料も祭壇に乗せると、森の中から獣の声のような地鳴りの音のような「ムォ〜ン」という音が聞こえてきた。
みんなその声を聞いて震えあがり、ジェシカを残して急いで立ち去った。
しばらく「ムォ〜ン」と言う音が鳴り響いていたが、やがて鳴り止むと誰か近づく足音がしてきた。
数人の話し声が聞こえ馬車が着けられ、そのままジェシカと食糧を馬車に乗せてさらに森の奥へ連れていかれた。
森の中の洞窟に到着すると、ジェシカは目隠しと猿轡を外された。
「うまくいったぜ。バカとなんとかは使いようだなぁ。」そう言いながらニヤニヤ笑う男達がいた。
ジェシカは「これは何!?どういうこと?!あんたらは何なの?!」と叫んだ。
男たちは笑いながら「俺達は山の主だよ。」という。
「お前は俺達の供物になったんだよ。」
「山の主とか言って村の人たちをこわがらせて!あんたらただの盗賊じゃない!。」ジェシカは盗賊とわかると恐怖心が消え怒りがこみ上げてきた。
「違うな、俺達は何も言ってない、奴らが勝手にお供え物を持ってきたんだ。
奴らが勝手に恐れて、勝手にお供えを持ってきて、安心してやがんだ。
全く馬鹿は死んでもバカだよ。ほんと。」男達は心底軽蔑するように言い放った。
「さて、ありがたくお供え物をいただくとするか。」
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