第166話 ジェシカの帰還2
イングマルたちは村の中に転がるようにして到着するとジェシカを探した。
村人の1人を捕まえて「ジェシカはどこだ!?」と聞いたが、首を振って「知らない」という。
ちょうどそこへ、ジェシカを祭壇に運んでいた者たちが戻ってきた。
イングマルは両親を見つけると、急いでジェシカの居場所を聞いた。
はじめは首を振ってとぼけていたが、締め上げると「もう遅い!ジェシカは山の主に捧げられた!」と叫んだ。
イングマルたちは彼らがやってきた足跡を辿って行った。
村長や両親は「行ってはいかん!山の主に祟られる!」と叫んでいたが、無視して向かった。
幸い馬車の轍や馬の足跡があり、行く先はすぐわかった。
しばらく行くと山中の泉の側に祭壇らしい場所があり、そこから森の奥へ新しい馬車や馬の足跡が続いている。
慎重に辿っていくと、森の中から「ムォ〜ン」という音がしてきて辺りに不気味に鳴り響いた。
みんなは気味悪がって怖がったがイングマルは慎重にじっと聴き、音のする方向へ向かった。
だんだん大きくなってきて、岩影から聞こえてきた。
そばまで来ると、音は機械的なものになっていた。
岩陰をのぞくと馬車の荷台に大きな箱があり、男2人が大きなハンドルを必死に回していた。
音はその箱から鳴っていた。
イングマルは男2人にクロスボーを放ち、腕や足に命中させた。
男たちは荷台から転げ落ちて、イングマルに叩きのめされた。
男を縛り上げ、隠れ家に案内させた。
すぐに洞窟が見えてきて、中から怒鳴り声や騒ぎ声が聞こえてきた。
ジェシカはボロボロになりながらも戦っていた。
隙を見て盗賊の剣を奪い、ほとんど裸になってしまっていたが洞窟の中の狭い隙間を背にして男たちに対峙していた。
数人の男が手傷を負っていた。
みんなで洞窟入り口を包囲し、クロスボーを構えた。
イングマルが突入しジェシカを取り囲んでいる男たちを背後から斬って行く。
驚いた男達が応戦しようとしたがすぐにクロスボウに射たれてしまった。
生き残った男たちは、すっかり包囲されていることがわかるとすぐ降参した。
男達はほとんど全員重傷を負い、いちばん怯えていた生き残りの若いのを捕まえて事情を聞いた。
皆から剣とクロスボウを突きつけられた男はスラスラと話し、以前生贄にされた女の事も口ごもっていたが白状し、皆でなぶり殺して洞窟のすぐ側に埋められていた。
イングマルは男たちに犠牲者を掘り出させ馬車に乗せた。
男たち全員を縛り上げ、馬車に乗せてからくり箱の馬車も回収して村に戻った。
村人は騒いで集まってきてジェシカが戻ってきたとわかると村人たちはさらに騒ぎ出して「なんで連れて帰ったんだ?!山の主が!化け物が!祟られる!どうしてくれるんだ!」と悪態をついた。
「山の主というのはこいつのことですか?」とイングマルは言うと、からくり馬車を持ってきてからくり箱のハンドルを回した。
箱の中の風車が回り、ふいごの風が勢いよく箱の中のふえの部分を通り抜けると「ムォ〜ン」という音が鳴りだした。
箱に共鳴して大きな音が鳴っていた。
村人は皆驚いていた。
捕らえた男たちを村人の前に引き出すと、男たちはこの村と隣り村の男たちで出稼ぎに出たままになっている男たちだった。
村人は全員目を丸くして驚いていた。
「ほんの!ほんの!いたずらのつもりだったんだ。ちょっとおどかすだけで!な!な!たのむ!許してくれ!!」
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