第157話  会戦







丘の上から眺めて、皆盗賊団の数を見て驚いていた。



予想では400から450ほどと思っていたのに、どう見ても700以上いる。



敗残兵だけでなく近隣の村々からも食いつめ浪人や遊び人が合流しているようだ。








盗賊団は丘の斜面にいる王都軍の数を見て思わず嘲笑い、「また勝利は確実だ。」と思っていた。





盗賊団は丘のふもとまで来るとハの字に陣形をつくり、両端に2つに分けた弓兵を配置し、中央に歩兵と重装歩兵を並べていた。




距離200から300メートル。




陣形を並べ終わると、すぐ奇声と共に弓兵が矢を放ってきた。






王都軍は全員、盾を頭上に掲げて身を守る。


盾は全員2つ以上の余分があるので、損害はなかった。






ローズは丘の後ろにいる自軍の弓兵に向かって合図を送り、左側にいる敵の弓兵に向けて矢を放たてさせた。



ベテランの弓兵は前もって相手のいる位置を下見し座標のように把握しているので、直接ターゲットを見なくても矢を放てる。



観測員が矢の落ちた位置を大声で弓兵に伝え「ちょい右!」とか「あと20 m!」とか言って位置を修正させた。







盗賊団の弓兵は見えない敵の弓兵の攻撃にあわてふためき、盾もなく身を隠す場所のないところで次々損害が出ていた。



半数以上の損害を出し、左側に配置されていた弓兵は逃げ始めた。



反対側にいる弓兵と合流しようとかけて行く。



右側の弓隊に合流すると、今度は右側の弓隊に矢が降ってくる。






盗賊団からは全く見えない位置に敵の弓兵が潜んでいるので、実際の損害以上の恐怖心が兵を浮き足たたせ、右側にいた弓兵はすぐ背後の森の中へ逃げ出し始めた。





盗賊団のリーダーは弓兵が逃げてしまったことを気にしつつも、王都軍の本隊は200ほど、このまま一気にケリをつけようと突撃を開始した。




歩兵は叫びながら走って斜面に取り付くが、馬車まであと70 mというところで、木の枝が邪魔で前進できなくなる。



そこへクロスボーの射撃が始まった。




馬車や盾の間からは正確に矢が飛んでくる。




バリケードの枝を薙ぎ払っても次の2重3重のバリケードを越えねばならず、足を止める度討たれて前に進めない。








盗賊団は重装歩兵を最前列にして密集して盾を何重にも並べ、その後に歩兵が続くのだが彼らには盾が足りず、頭上からの矢は防ぐことができない。




また前面の馬車から強力な矢が飛んできて、盾ごと重装歩兵も吹き飛ばされた。








装甲を施した馬車内にはキャロルとフランク達がおり、キャロルは相手から目を離さず手だけ伸ばしてフランクの装填するクロスボーを受け取ると1本も外さず、大型のクロスボーは相手の盾ごと数人を一気に薙ぎ払っていた。




しばらくするとフランクの方が疲れて参ってしまい、先ほどからまったく矢が当たらない横に居た歩兵と装填を代わってもらい、フランクは水とビスケットを食べて休みながら、キャロルの射撃を見ていた。




他の馬車も同じように正確に大型クロスボウの矢が飛んで行く。




キャロルが手を伸ばすのでビスケットと水を渡すと、目線は敵を見据えたままビスケットを口に放り込んでモゴモゴと食べながら、クロスボーを放ち続けていた。



それを見てフランクは思わず笑ってしまい「よしッ!やるか!」と気合いを入れ直すと、ヒーヒー言って苦しそうに大型クロスボウを装填している歩兵と交代し、装填し続けた。




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