第156話 出陣
集めた歩兵にクロスボーを渡し射撃訓練を行わせ、騎士1人に付き12名の歩兵が1組となりそれぞれのメンバーを一緒に行動するようにし、自分の旗印と隊のメンバーの顔を覚えこませた。
太鼓の合図と旗の合図(右、左、前進、後退、停止)の5つのパターンを徹底して覚えてもらい、本陣の合図で素早く動けるよう連日訓練を行った。
クロスボーの射撃訓練以外は、すべて合図の通り動く訓練のみ行った。
司令官はフランシス、ジャンポールだが、イングマルが実際ほとんど指揮している。
子供が指揮していると怪しまれるので、イングマルは2人の横にローズを並べ旗を持って立っているようにし、イングマルはその後ろにちょこんと付き人みたいに座っている。
ローズはかかしみたいに立っているだけなのを嫌がっていたがイングマルは有無を言わせず従わせた。
その不満からくる怒りの表情が「神々しく美しい参謀が参加している」と多くの兵がその姿を見ただけで、士気が上がった。
それを聞いて王さんの友人のガス・ウィンザースプーンという人も面白そうだと参加した。
よっぽど暇なのか?
パール伯爵の屋敷でイングマル達と一緒に戦った人だが、王さんの友人なので司令官がいいのかと皆気を使ったら「自分はそんなガラじゃない」と指揮官は辞退した。
しかし何かあってはいけないので、政治的な判断を仰ぐ時の御意見番として本陣にいてもらうことにしてもらった。
歩兵達の訓練をしている間に彼女達は食糧等の物資を集めに数人組で奔走していた。
さらにパン屋の窯を借りて彼女達は行動食のバター、ナッツ、ハチミツのたっぷり入ったえん麦ビスケットを大量に焼いて全員に行き渡るようした。
歩兵200、騎士12、弓兵80、イングマルたち35、フランクと友人たち、合わせて340。
これが全兵力であった。
前回より兵は少ないが、資金はあるので物資は潤沢である。
ローズの事はすぐ評判となり、戦闘には参加しないのに見物人の方が多く集まってきた。
十分準備が整い、短い訓練を終えていよいよ出陣となり、ゾロゾロと野次馬たちがついてきた。
前回とは違い派手な出陣式みたいなものはないが、美しい参謀の最後を見届けようと多くの人がついて来た。
野次馬が大勢いることで、こちらの陣容は筒抜けである。
だがイングマルは気にしていない。
筒抜けならそれなりの対応の仕方がある。
弓兵には弓を隠し歩兵の格好させて移動した。
盗賊団の位置はおおよそ分かっているが、イングマルは正確な位置をつかむため、先行して10kmから20kmの範囲を放射状に行ったり来たりして偵察した。
ほどなく他の者から報告にあった方向を40kmほど先行して盗賊団を発見した。
このまま進めば翌日の昼頃には両者は出会うと思われた。
イングマルは戻ってくると「今日はここで泊まる!」と野次馬たちの前で発表し、明日の昼には会戦になると公表した。
インタビューに来るものや、興奮が収まらないものたちが遅くまでさわいでいた。
やがてみんな寝静まる頃、夜中にイングマルは兵全員を起こし駆け足で移動させた。
夜中、5kmほど走りに走り途中で見つけておいた絶好の陣地に到着すると全軍に急いで周りの森の立ち木を伐採し、枝がついたまま丘の斜面に並べさせた。
陣地は小高い丘になっていて、丘の両端は川と湿地が広がっている。
近所の農家から借りてきた牧草を干す、架け棒もたくさん並べた。
弓兵には、丘の上から見える景色をしっかり覚えこませた。
一晩中みんな働いて準備を整えると飯を食い一眠りしたが、イングマルと騎射専門の20騎はさらに5kmほど先へ進み、ずっと後方の森の中で隠れて待機し夜明けを待った。
フランシス、ローズ、ジャンには作戦と段取りを伝えておいた。
丘の斜面の中程には装甲を施した馬車が並び、馬たちは丘の向こうに待機させ弓兵も丘の向こうの斜面に待機していて、盗賊団側からは見えない位置に配置した。
夜が明け、2時間ほどしたら盗賊団が現れた。
盗賊団にも野次馬から王都軍の報告が入っていたのだが、予想より早い王都軍の到着に驚いていた。
野次馬たちは夜中に置いてけぼりを食って、慌てて後を追ってきていた。
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