第154話  鍛冶屋のフランクとの再会




思いもよらない願いごとに全員が驚いて拝謁室はざわめいていたが、王は冷静に考えていた。



大胆なのか図々しいのが気に入ったのかわからないが、一緒に戦った王さんの友人は大声で笑っていた






王さんは「よしっ! 新しい爵位と家名の件は了承した。


だが領地の事は少し待つがよい。


他の貴族の手前、このまま領地を与えては不平不満が出る。



他の者が納得するような手柄を立ててみよ。



そうだ! パール伯爵から押収した財宝を軍資金として与えるので、そなたらの力で見事、盗賊団を退治してみよ。



そしたら全て認めてやる。」と言った。




「さすが王さん、一筋縄ではいかないなぁ」とイングマルは感心した。





彼女達は喜び半分、悲嘆半分で複雑な表情をしていた。


会場では気の毒に思う者や、しめしめとほくそ笑む者や、「出来るわけがない」と言う者達で騒がしかった。






前回、相手より倍の数で討伐に当たって、こてんぱんにやられたところなのにそう簡単にうまくいくはずがないではないか?!






イングマルはすぐ闘いのことを考えていた。



敗戦の直後で兵は集まらないし、装備も1から集めなければならない。




しかしいつまでもぐずぐずしていられず、王の気が変わらないうちに行動しなければならない。






王宮を後にして、まだ事態を飲み込めていないみんなに早速イングマルは指示して、ジャンとフランシスには人集め、彼女たちには食料、飲料水、医薬品集めを指示した。




イングマルは武器集めを分担した。




フランシスもジャンも皆もまだなにも考えることができなかったが、皆異議は無い。



イングマルの言動も反論の余地がないほどきっぱりしており、自動的に彼の言うことに従った。




イングマルは武器集めにあたって、1つだけ心当たりがあった。




かつてマクシミリアン学園在校時、剣術試合で対戦相手にリンチされそのまま退学した鍛冶屋の息子、フランク・ケイズの工房である。




王都の外れにある工房で、王都では名の知れた工房である。




学園のことは時間にしたらそれほど経ってはいないのだが、今のイングマルには遥かな昔の事のようである。




今のみんなの武器は、イングマルが人買いや盗賊を倒して回収したものを改造して作ったものだが、本格的な戦いを前にちゃんとしたプロにしっかりしたものを作ってもらいたかった。



そこでみんなを連れてフランクの家に久しぶりに立ち寄った。






大きな工房で横に小川が流れていて大きな水車がいくつも回っており、ふいごやハンマー、グラインダーの動力原となっている。


のどかな鍛冶屋という感じではなく、機械音が鳴り響く工場のようである。



原料の鋼材や燃料になる炭が工房の前にうず高く積まれていた。



それらを運び込む荷駄や馬車がひっきりなしに出入りして忙しそうだ。




中に入ると、すぐフランクとフランクの父に会うことができた。






フランクもイングマルもお互いすぐには分からなかったが、父親が大声をあげイングマルを抱きしめ、フランクもイングマルだとわかると力いっぱい抱きしめイングマルは潰されそうだった。





フランクは学園を自然退学した後、家の工房を継ぎ鍛冶職人となっていた。





学園でのリンチの後遺症で顔面の左は大きな傷があり、左目は失明し皮で作ったアイパッチをしていた。




だがもともと体が大きく丈夫で筋骨隆々、イングマルと歳は1つしか違わないのにまるで子供と大人、ものすごい貫禄である。




昔からモテていたが、今では彼を見に来る女性がいつも家の前にいるほどモテていた。






イングマルはこれまでの出来事をざっと話し、人買い集団を討伐することになり、武器がいると相談した。







馬車にいた彼女たちをよんで「全員それぞれに合わせてオーダーメイドで剣を作ってくれ」と頼んだ。




フランクも父親も驚いていたが、二つ返事で引き受けた。






  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る