第153話  王都にて6







 近衛兵数騎が護衛し、王と側近とジャン、王の幼なじみの友人も面白そうとついてきて馬車に乗り、イングマルも皆の後から馬に乗ってついて行った。




パール伯爵の屋敷に到着すると、すぐパール伯爵を呼び出した。




驚いたパール伯はひざまずいて王を迎えた。




伯爵は「一体なにごとですか?」といい、パール伯はジャンに軍資金の横領と口封じのための人足の殺害を糾弾された。




パール伯は泣いて「濡れ衣だ!」と訴えた。



「そこまで言うなら、証拠を見せてみよ!でっち上げの証人を仕立てても納得できん!!」とわめいた。




王はジャンに「どうなのだ?」と聞いた。




イングマルは「こちらへ」と言うと王様を台所へと連れて行き、地下室へ行くと持ってきた大槌で地下室の左の壁を叩き壊し始めた。




漆喰が剥がれ落ち、同時に崩れ落ちてきたのは木箱そのもので、壁自体が木箱を積み上げてできていた。


その上から、漆喰が塗ってあったのだ。






転がり落ちた木箱が割れて、中から金塊が現れた。


金塊には、王家の紋章が捺してあった。




さらに壁を壊すと部屋が現れ、中には金銀財宝が山のように積まれていた。



過去に盗難に会い行方不明になっていた王家の宝物もあり、過去にも横領した金品であることがすぐにわかった。



みんな目を丸くして驚き「塵も積もれば山となるか・・・・」とジャンはつぶやいた。







1番驚いたのはパール伯だった。


なぜここがわかったのか?!




王さんは「パール伯!これはいったいどういう事だ!」と叫んだ。






パニックになったパール伯は急いで家の者を呼んだ。



「狼藉ものだ!!王の名を語る曲者だ!!この者どもを斬り殺せ!!」とわめいた。





すぐに剣を持って手下やら召使いやら用心棒やらが集まってきた。



「パール伯!」と王さんも側近も叫んだ。



しかしパール伯爵は「殺せ‼殺せーッ‼」とわめいている。





近衛兵は屋敷の外にいる。



イングマルは剣を何も持っていない。






ジャンと王さんの友人だけが剣を持っている。




なんとか牽制しつつ広い台所にたどりついた皆だが、逆に完全に囲まれてしまった。



イングマルは台所にあった牛刀や包丁を両手に持ち、側近と王を部屋の隅にやり、ジャンと王の友人、イングマルがその前でガードした。



王も側近も恐怖でひきつっていたが、ジャンとイングマルは落ち着いている。



王さんの友人はなぜか嬉しそうにして、戦うのを楽しんでいるようだった。






近づく者はすべて三人で撃退してしまう。




その間に壁伝いに徐々に出口へ向かい、イングマルが前に出て牽制している間に皆は裏口から外へ出て、ジャンは大声で近衛兵をよんだ。




すぐ近衛兵が飛んできたが、4人しかいない。




近衛兵は落ち着いて王と側近を囲んでゆっくり馬車へ向かう。




パール伯の手下らは、馬車を取り囲んでジリジリ近づこうとするが、すべてジャンとイングマルに倒されてしまう。



その隙に王さんの友人が増援を呼びに行った。





王さんは馬車に到着できたが、馬を外されていて動けない。


馬車の前でジャンとイングマルがガードし、反対側を近衛兵がガードし近づく者は全て撃退した。



しばらくにらみ会いが続いて膠着状態になっていたが、やがて近衛兵の増援が王さんの友人と共にやって来て、すぐに乱戦となった。



すぐにほとんど倒され、生き残りは取り押さえられた。



隠れて逃げ出そうとしていたパール伯もイングマルに取り抑えられ、縛られて王の前に引き出された。


王はパール伯爵を睨み付けて「パール!貴様~!」と唸った。


パール伯爵は顔面蒼白となってひきつっていた。






到着した増援にパール伯、手下は全員逮捕され収監された。



地下の財宝も全て押収された。











すぐにフランシスは釈放され、みんなの前に現れた。


拷問にあい傷だらけだったが元気そうだ。




ローズは半泣きで今にも飛びつきそうだったが、みんなの前なのでぐっと我慢しているようだった。




「皆、心配かけてすまなかった。」と相変わらずの無愛想だったが、嬉しさを隠せず少し微笑んでいた。





一旦王都にあるジャンの家に皆で向かい、フランシスを手当てして滞在した。


そこでフランシスは実家から縁を切られ、浪人になってしまったことを教えられた。





だが当人はそれを聞いても別に気にしてなかった。


むしろスッキリしたような、肩の荷が降りたようなそんな感じだった。








しばらくして王から全員呼び出され面会に行った。




拝謁室で王は皆の前でフランシスに侘び、このたびの働きに感謝し横領されていた財宝もすべて回収できたことをとても喜んでいた。




特に少年イングマルの働きに喜んでおり「特別に褒美をとらす、何でもいえ。」という。





イングマルは無邪気に喜んで「それじゃ」と、







「フランシスに新しい爵位と家名を与えて独立させ、セントナムの湿地近くの土地を領地として与えてほしい。」といった。








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