第116話 新しい対策
イングマルたちはフランシスを病院に任せて治療代を前払いし、折れた長剣を回収して木箱に納めた。
フランシスの命に別状ないことがわかると一安心して、すべてを病院に委ねてさっさと出発した。
フランシスは全快した後、主家に壊れた剣を持って帰り、壊れたことをとがめられるかと思っていたが宝石類がちりばめられた飾りは無事だったので、特に問題にされなかった。
折れた剣の部分はさっさと取り外し、似たようなものをはめ込んで事なきを得た。
フランシスは晴れてお役御免となり、実家に帰っていった。
その後、事件の詳細を報告するため、王都へ向かっていった。
イングマルは回収した人買いの防具を丹念に調べていた。
重くてごっつい甲冑はみんなのクロスボーでは効き目がなかった。
しかし少しでも軽くなるように後面は無防備である。
それでも重くて動きにくい。
大きな盾を併用すれば、ほぼ後以外は全く攻撃しても効き目がなかった。
イングマルは、新しい対策を講じねばならなくなった。
この重装備は重くて、扱えるものはよほど力のある大男でないと立つこともできない。
それに機動性はほとんどなく、素早い動きには対処できない。
このような者たちとの戦闘は避けて逃げに撤すればいい、と思われた。
しかし、いつも逃げれるわけでは無い、袋小路に追い詰められる可能性もある。
やはり強力な攻撃武器が必要だ。
早速イングマルは強力なクロスボウを作った。
かつて祖父が使っていたのと同じような、大型のクロスボーになった。
装填には滑車を使わないといけない。
これを使えば、100m以内ならほぼどんな甲冑も貫通できた。
しかしこれを使うには体力がいる。
かろうじてローズは使えたが、他の者にはやはり大きすぎた。
みんなにも使えるサイズで、力の強いクロスボウを日々改良していた。
射程は少し短くなるが、重い矢を使いストロークの短いクロスボーができた。
装填には滑車を使い、射程は70mほどだが、威力は変わらない。
これをみんなの分作った。
皆、二種類のクロスボウを状況によって使い分けるようにした。
これとは別に、持ち歩くことができないほど大きくて重い、馬車の荷台に据えて使わなければならないクロスボーを作った。
これはストロークも、引きばねの強さも、射程も威力も他とは桁違いで、どんな盾も甲冑も貫通する。
小型のバリスタのようなクロスボウだ。
装填には滑車を使い時間がかかるが、荷台に据えて使うので力はいらない。
各馬車に2丁から4丁ずつ作った。
もはやイングマルたちは、軍隊と変わらない装備になってしまった。
装備を急いで整えながら、イングマルはまた工程の見直しを始めた。
魚釣りをして遊んでいたことが結果的に川沿いを移動していると、さとられてしまった。
残念ながら、魚釣りのことは当分あきらめなければならない。
新しい装備を整えて直ぐに新しい道に出発した。
ローズは人買いのリーダーを倒せなかったことが悔しくてならないようで、イングマルに剣の戦いの稽古をせがんでいる。
それにイングマルが見せたあの剣を折った技を教えて、としつこく迫ってくる。
「ローズにはまだ無理。」と言うのだが、あれは相手の戦意をそぐためのもので、別に出来なくてもいいものである。
だがローズはいたく気に入ったようで「やりたい。」と言う。
ローズ愛用の剣では細過ぎてできない。
イングマルが使っているものでないとできない、というのだがローズはどうしてもやりたいと譲らない。
やむなくイングマルは珍しく口数多く、あの技の解説を始めた。
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