第115話  名剣3







人買いのリーダーは金ぴかの長剣を抜いて、フランシスとお互いに打ち込んでゆく。




それを合図に、馬車から一斉射撃が始まった。




しかし武装集団はいつもとは違い、重装甲の甲冑を着込んでいて大きな盾も持っている。



命中するが、有効打にならない。




みんなのクロスボーでは、威力が足りなかった。




フランシスはリーダーと互角にうちあっている。




フランシスを取り囲もうとする者たちに向けて援護射撃をしているが有効打ならず、だんだんフランシスが馬車から離れていき囲まれ出した。



馬車を移動させようとするが馬車も取り囲まれているので、素早く移動することができない。




イングマルはクロスボーと剣を持ち、馬に乗ってフランシスの援護に向かう。



人買い集団の背後に回りこんで、後ろから攻撃した。



イングマルに対峙した者たちは、馬車から無防備な後ろを打たれ、やっと数人を倒した。



相手は重すぎて小回りがきかないようだ。


イングマルは素早く動き続け、囲まれる隙を与えない。




しかし、フランシスはかなりやられて、あっちこっち血だらけになっている。




イングマルはなんとか援護に近づこうとするが、なかなか近づけない。




とうとうフランシスは、完全に囲まれて数人から剣で打たれていた。




もうだめか、と思ったとき馬車から剣士が飛び出した。




この世のものとも思えない程、神々しく美しい姿の剣士だ。


ローズは新しい剣を翻すと、たちまちフランシスに群がる男たちの急所を刺して行く。



みんな顔や喉、脇腹など防御のない所や継ぎ目のところを的確に刺して行く。




あっという間に5〜6人の男が倒れてゆく。




ローズは斬りかかろうとした男たちの手の甲や腕の内側を刺して戦闘不能にすると、倒れているフランシスを引きずって馬車の下に放り込んだ。




人買いたちがひるんでいる隙にイングマルと合流できたローズは、人買いのリーダーと対峙した。





剣を構えるリーダーとローズ。


両者にらみ合って少し間をおいてから、リーダーが長剣を打ち込んでくる。



ローズはかわすと、リーダーの首元に突きを数発放つ。



が甲冑に弾かれた。




もう一度打ち込むが、これも弾かれる。




リーダーは横になぎ払い、ローズは大きく引いて避けた。



しかし、ローズが引いたと同時に、相手が体当たりしてきてローズは弾き飛ばされた。





イングマルは独り奮戦するローズをずっと見守りながら「切っ先を上げよ!」とか、「ためを作るな!」とか、「体が硬くて重い!」とか、やかましく口だけ出して声援を送っていたが、リーダーに弾き飛ばされたローズの剣を拾い上げて、転がりながら戻ってきたローズに「修行が足りん!!」と説教した。





ローズは「うるさいよ!!あんた、見てないでかわりなよ!!」


そう言うと、イングマルから自分の剣をひったくった。




今度はイングマルが、地面をはうようにリーダーに近づく。



リーダーは、草刈りでもするように長剣を地面に向けて左右に振り払った。





イングマルは飛び上がり、長剣の柄の上を駆け上がるとリーダーの背中に張り付いた。




そのまま喉に短剣を刺そうとしたが、顎ひもに当り切り込みが浅かった。




リーダーは暴れて剣で背中をバンバン叩くが、すでにイングマルはリーダーの股の下にいて、今度は急所を掻き切ろうとした。




しかし、これも外してしまったが、太ももの内側を切さいた。


血がボタボタ流れ落ちた。





リーダーは飛び退いて、長剣を大きく振りおろそうとした。





イングマルは自分の剣を肩に担ぐようにして構え、地面に這いつくばった姿勢から体重を乗せてのびあがり、振り下ろしてきた相手の剣のつば元付近を叩きあげた。




「バチンッ!」という音が響いて、相手の剣は鍔元から折れてイングマルの背後の地面に突き刺さってしまった。




リーダーは「クソッ!」と叫んで引いたが、次の瞬間にはイングマルの剣が、甲冑を貫いて胸に突き刺さった。




勢いよく剣を抜き、「ぐッ!」と言って倒れてきたリーダーを下段から切り上げた。




リーダーの首がコロコロと地面に転がり、体はうつ伏せに倒れた。




リーダーがやられたのを見ると武装集団は戦意を失い、やがて散り散りに逃げ始めた。









結局18名を討ち取った。




戦闘後フランシスを馬車に乗せて介抱し、イングマルは倒した男たちをたんねんに調べて回った。




武器や防具を回収し、リーダーの持っていた名簿や地図などの書類を回収した。



その後、倒した男たちの墓を作った。



フランシスは重症だったが、ハンモック状のベッドを作り直ぐに近くの町へ運んだ。











数日後、町の病院でフランシスは持ち直して気がついた。



しかし、みんなはもう旅立ってしまっていた。








枕元には、折れた伯爵家の宝剣が、木箱に入れて置いてあった。






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