第98話  イーリス、マーヤの帰還2



イングマルは「ローズ!」と叫んで、ローズの首根っこをつかんで床に引き倒し、イングマルがその上に乗っかって、ボロマントを翻してかぶせた。



たちまちつぶてが数個飛んできて、ボロマントを引き裂いた。




イングマルは、自分とローズの腰の短剣を引き抜くと、相手に向けて投げた。





2人に命中し、イングマルは剣をつかんで飛び降り、もう1人の相手に襲いかかった。




逃げようと走り出した相手に木の棒を投げ、足に絡ませて倒した。




そのまま走って、剣の握り部分で相手の顎の先を打って気絶させた。




ナイフの刺さった相手は、腕や肩に刺さっただけなので、大した傷では無い。




3人を裸にし、目隠しをして縛り上げた。


戻ってきたイングマルは、みんなの前に3人を放り出した。





ローズはイングマルに「あんた、あたしに対する扱いが、雑じゃないかい?」と文句を言った。




ローズはイングマルに引き倒された時に、椅子の角で頭をぶつけたらしく、額に大きなたんこぶができていた。




それを見てイングマルは「大丈夫?」と聞いた。



ローズは「ええ。」と言ったが、怖い顔で睨んでいる。





「おのれ!よくもローズをあんな目に!!」と責任転嫁するイングマル。





「さて、どうしようか?」とイングマルは3人の男を見据える。


イングマルより歳上だが、まだあどけなさの残る少年だった。



女たちは口々に「ちょんぎっちゃおう!」とか、「いやいや、玉抜きの方がいいんじゃない?あたし、子牛の玉抜きしたことあるから、できるわよ。」とか恐ろしいことを口にした。




裸にされ、縛られ、目隠しをされ、普通に縛られている時よりも、恐怖が倍増するようである。



男たちは泣き喚いて、震えてイングマルの足にしがみついて許しを乞うた。



涙、鼻水、よだれをダラダラ流し、恐怖のあまり失禁している。余程恐ろしいのであろう。





イングマルは男達に「なんで、ぼくたちを襲ったんです?」と聞いたが「ごべんださーい!!。ゆ〜る〜じ〜て〜。」とわめくばかりだった。




「ちょんぎられたくなかったら、質問に答えなさい!!」女たちがどなる。



「ひっ!!」と体をこわばらせて嗚咽して泣きやもうとする男たち。





「盗賊が来たら、すぐ村に知らせ、それ以外はさっきみたいに攻撃して、追っ払うんです。ひっく。・・・グズっ・・・」子供みたいに嗚咽しながら答える。



「あんたらは人買いだろー・・・・うっうっ。・・・追っ払って、時間を稼いで、そして村に知らせるんだ。・・・・ぐすっ。・・・」



「人買いだって!?何いってんだい!」皆一斉に叫んだ。




「だってそうだろう?イケメンが甘い言葉で娘をそそのかして、連れて行くんだ。うっうっ・・・」



ローズのことを言っているようだ。




ローズはたまらず「ひどい勘違いだ!私たちはこの先の村に、さらわれた娘を届けに来たんだ!」とさけんだ。




「なんだって!?本当かい!?イーリスやマーヤたちのことかい?」と男たちは叫んだ。





ローズはイーリスとマーヤをよんで、男たちの前に連れてくると、目隠しを取った。




「ベン!ハンス!ヤンじゃないか!」イーリスとマーヤはそう言うと、3人に抱きついた。




若い娘に抱きつかれて、裸で縛られているままの3人は、下半身に一気に血が流れてゆくのを感じて、「ちょ!ちょ!頼むから服をくれー!!」と叫んだ。








怪我をした3人を手当てしてから、彼らに先導され、深い渓谷を進んでいき、ベンは途中にあった大きな洞のある丸太を、棒で調子をとってたたいた。



何かの合図なのだろう。




さらに進むと、崖の上に見張り台があちこちにあり、監視する者が手を振っている。


ヤンは「オレ、先に言って知らせてくる。」と走っていった。







がけの切れ目を抜けると、開けた場所にでた。



がその異様な風景に、みんな目を丸くした。




何重もの堀と柵が張り巡らされた要塞である。




これが新しく作られた、イーリスとマーヤの村だった。




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