第88話  道中にて3



盗賊団のリーダーはみんなに警戒させたが全員がイングマルに対峙していると今度は後ろの馬車から矢が飛んできた。




イングマルは馬の腹帯の下にフックを作っておいてクロスボウの先端をこのフックに引っ掛けて両手で弦を引き上げて装填すると、馬から降りなくても装填することができる。




盗賊団はどう対処していいかゆっくり考えている暇もなく、次々とクロスボウの矢が前後から飛んできてやられてしまっている。





盗賊団のリーダーは2手に分けて6騎をイングマルのほうに向かわせ、残りを馬車に向かわせた。





イングマルに向けて6騎が駆けてゆくが、イングマルは3丁のクロスボウを落ち着いて装填し順番に撃ってゆく。




3人を射倒し次の装填をしてもう1人倒したところで、やっと目の前のまで残りの2騎がたどり着いた。





しかしイングマルが剣を抜いて駆け出し、2人に突進してきた。




盗賊団の2人はまさか向こうから突進してくると思わず、少しひるんだ。




イングマルは相手の左側に突進し、全身の体重を乗せて相手の胸に剣を突き立てた。





相手は「ガーッ。」と叫んで崩れ落ち剣が深く刺さりすぎて抜けなくなってしまったので剣を放し、馬上から宙返りしてもう1人の背後に着地するとそのまま短剣を首につきさした。




あっという間に全員倒し、剣を回収すると再びクロスボウを装填しほぼ同じ位置から射撃を始めた。





馬車に群がっていた盗賊団はすぐに背後から撃たれはじめ、イングマルに向かって行った6人がすでに倒されてしまったことを知るとリーダーは「このままでは全滅するかも」と思い始め全員でイングマルを襲うことにした。






すでに半数近くになって生き残った者たちがイングマルめがけて駆けてゆくが再びたどりつくまでに3騎がやられ、今度はイングマルも駆け出し相手から20mほどの距離をとってつかず離れずの距離を保って逃げ回る。




イングマルは小型の弓矢を取り出し走りながら相手を射倒してゆく。



5騎を仕留めやがて馬車のほうに駆けてゆく。




イングマルは馬車の前30mほどのところをゆっくり横切って行く。





その後をついて盗賊団も馬車の前を横切るが馬車からの一斉射撃に多くが倒されてしまった。




無傷だったのは2人のみで残りの盗賊団は全員瀕死の重傷を負い、逃げ散ってしまった。




イングマルは盗賊団が完全に遠ざかったのを見届け、あたりを警戒しながら戻ってきた。





そこへ茂みに隠れていた商人たちが現れ「やー、よくやった、よくやった。」と言って出てきた。



「さすが俺たち、最強のチームだ!」と喜んでいる。








誰かが放ったクロスボウの矢が男の足元に突き刺さる。





男は引きつった笑い顔をしながら「さっき言ったことを気にしているのかな?あんなのは冗談に決まっているだろう。はははははは。」





再び矢が飛んできて、股下ギリギリのところに矢が刺さる。






「う~ん、これならもう怖いもんは無しだなっ!」








こういうのを厚顔無恥というのであろうか。




その図太さはむしろいっそすがすがしく、羨ましく思えるほどだった。


みんなは怒りよりも呆れ果ててしまった。





イングマルは全員と合流し「みんな無事?」と聞いた。




みんな疲れた表情で「ええ。」とうなずいた。







「中継地に行ってきたよ。」とイングマルは言い、商人に向かって「中継地であなたたちに用があるのですぐに来い、との事でした。」



「僕たちは先を急ぎますので、ここでお別れです。それではごきげんよう。」と言って行ってしまった。




男たちは「ちょっと待て!冗談だろ! こんなやばいとこで置いていくなよ! さっきのはホント冗談なんだって!仲良くいこうぜ!」と言ったところでクロスボーの矢が飛んできて尻に命中した。





男は「ぎゃー!」と悲鳴をあげて、地べたに這いつくばった。







誰かが「そうやって地べたでも抱いてな!」と言ってそのまま行ってしまった。






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