第86話  道中にて




皆、また魚を釣ろうとしたけれどこの辺のお魚はすれてしまって、もう釣れなくなってしまった。



いつまでも遊んでもいられない。



せっかくの気分転換だったのに、ローズとイングマルは口を聞こうともしなかった。



気まずいまま、次の街へ出発した。





次の街まではかなりあるので、みんなはローズとイングマルに「仲直りしてよ。」と言っていたがお互い知らんぷりしている。




その日は朝から雨が降ったりやんだりして薄暗く、嫌な天気だった。


ただでさえ暗いのに森の脇の街道はほとんど夜のように暗かった。






その先で騒いでいる1団がいた。



イングマルが単独、馬でかけて偵察に行くと別の隊商が盗賊に襲われていた。



イングマルはすぐに戻って全員に戦闘準備させると、武器を持って再び盗賊に襲われているところに向かった。




馬車3台が盗賊団に襲われている。




盗賊団は20人以上いるようだ。






イングマルのクロスボウが盗賊団の背後を攻撃する。





女性たちの馬車が街道をふさぐようにして並び、襲われている馬車を援護するように荷台から一斉に、クロスボウの援護射撃が始まった。




盗賊団はそれを見るとすぐに引き揚げてしまった。




襲われていた隊商の男たちは「助かったー。」と抱き合って喜んだ。



男に変装していたローズにも抱きつかれた。



抱きつかれた瞬間、女とばれた。



女とばれて、驚いてみんなを見た。




よく見ると、全員女であることがばれてしまった。




イングマルもローズも「しまった。」と思ったけれど、もう遅かった。


襲われていた隊商の男たち全員に知られてしまった。






仕方ないのでみんなに事情を説明し、みんなが故郷へ帰る途中であることを告げた。





男たちは顔色がみるみる変わり「ぜひ俺たちも手伝わせてくれ」と言ってきた。



女たちは不安もあったが、少しほっとした感じがした。




大人の男たちがいることで安心感がある。




盗賊に襲われていたことで自分たちと同じ境遇だという思い込み、仲間意識が警戒心を低くしていた。




男たちはリーダーはローズと思っていたので、ローズたちとばかり話している。




イングマルは唯一の男だがあまりにガキッぽくって、初めから無視されていた。




それに女たちを故郷へ送るという大役の唯一の男がイングマルなので、男たちはやっかみというか、ひがみと言うか「なんでこんなガキが?生意気な奴」と言う想いを持っていた。





そんな男たちの感情を知ってか知らずか?イングマルは黙っておとなしく目立たないようにしていた。





イングマル自身も皆を無事に送り届けることができる頼りになる人がいれば任せたい、と思っていた。






この人たちが信頼できればイングマルはお役御免、晴れて自由な一人旅ができる、そんな風に思っていた。




彼らの馬車も含め一行は大所帯となり、一緒に旅を続けた。





男たちは初め女たちに至れり尽くせりして何かと世話を焼いていたが、ちょろちょろ目に入るイングマルがうっとうしくなってきた。




男たちは目配せして、イングマルに使いを頼んだ。




「この先の街道の別れを右方向に行くと、隊商の中継地があるので先にいって事情を知らせてほしい」と言ってきた。




「見ず知らずの僕なんかがいって、大丈夫なの?」と聞いたけれど「大丈夫、行けばわかるから。」という。




「じゃ先にいってくる。」と単独で馬に乗って行ってしまった。


女たちは少し心細くなったけれど、すぐ戻ってくるだろうと思っていた。









イングマルがいなくなって程なくして男たちは急に態度が横柄になり、メシを作れだの、しゃくをしろだの、アレをしろ、これをしろと、自分の所有物か、嫁さんのような態度になってきた。








イングマルは街道の分かれ道を右方向へ行くけれど、いけども行けども、それらしい中継地は見当たらず、なんだか寂しい所に来た。



こんな寂しいところに中継地があるはずもなく、間違えたかと思い引き返そうとした。



しかし、前から2人の男が馬に乗ってやってきた。



どう見ても一般人に見えず、山賊か盗賊の類いだ。



まずい!と思い、反対側に行こうとしたら、こっちにも1人いた。




すでにクロスボウを構えていた。








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