第40話 エストリアへ2
イングマルはまず自分が川に入り水かさを棒で測りながら、浅瀬を探してまわるが背丈よりも深いところばかり。流れも早い。
渡れそうもない。
彼だけならば泳いで渡れるのだが荷と馬を持っては無理そうだ。
イングマルは仕方なく丸太を集めてつなぎ、筏を作ることにした。
数日かかったが丈夫な筏を作り、長い竿とオールを作ってテストしてみた。
具合がいいので馬を載せ少し流されながら無事、向こう岸に着いた。
馬に筏を引かせて少し上流に筏を運ぶ。
単独で再び戻り今度は荷物を運ぶ。
なんとか無事エストニア領に上陸することができた。
その日はそのまま休み、翌日荷物を整えて出発した。
この国ではイングマルは賞金首ではあるが指名手配がされていない。
しかも今は公爵の逮捕後、賞金は取り下げられている。
イングマルは以前一度だけ来たことがあるスレーベンの街へ向かうことにした。
スロトニアとの国境近くの大きな街なので戦争の時軍の駐屯地となり、戦争が終わり軍が引きあげ解散するまでは大賑わいだった。
戦争が終わり軍が引き上げ解散してからは少し静けさを取り戻していた。
街の掲示板を見て公爵は爵位を剥奪、幽閉され長男が後を継いだ事、長男は善政をおこなっているとのことだった。
イングマルの賞金は取り消されていた。
掲示板には新しく公爵ところで女性を殺害した使用人と傭兵に賞金がかけられ、正式な手配書となっていた。
被害者女性はもともとこの国の住人であったのでこのエストリアでも指名手配となっている。
イングマルはこの街の市場に向かい商売の許可をもらった。
市場の隅に空きスペースを見つけ荷をおろして商品を並べ始めた。
イングマルの山のような荷物が街に入ってきた時から目立ってしまっていた。
早速客が集まってきて炭も籠もすぐ売れ、薬草も高値で全て売れてしまった。
ほとんどの商品が売れてしまってそろそろ片付けようかと思っていたとき、声をかけられた。
叔父のところにいた使用人の1人であった。
歓喜あまって思わず叫びそうになったが慌てて口を押さえ静かに抱き合った。
使用人は去年からイングマルがやってくるのを待っていたのだという。
イングマルは後片付けをして市場に料金を払い、彼の後に付いていった。
叔父の商売上この街に小さな事務所があるのでそこに向かった。
事務所にも知り合いがいた。
彼とも静かに抱き合って喜んだ。
すでにイングマルが到着したという連絡は叔父に知らせているとの事だった。
この日はそこに泊まり翌日出発した。
実は叔父の家はイングマル事件以来、用心のためこの国に拠点を移し家族もすべてエストリアにやってきていた。
この町からそう遠くないところに新しい家がある。
気が焦って早足になるのを抑える。
やがて大きな農家が見えてきた。
元農家の家と敷地を買い取って、店と自宅を併用している。
敷地内に入ると気配を感じたのか?犬やニワトリやアヒル、馬たちが飛び出してきた。
イングマルも馬から飛び降り彼らに抱きついて転げまわって彼らとじゃれついた。
犬のトミーの顔をよく見てもう一度強く抱きしめた。
いつの間にか涙がポロポロと流れ出て犬が懸命に舐めとっていた。
やがて叔父夫婦が姿を現し静かに抱き合った。
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