第29話 サムスン・ランツ伯爵との戦い
「剣の勝負ですね。」とイングマルはいった。
ランツ伯は「あ、ああ」というと剣を構えた。
イングマルも顔の炭を手ぬぐいで拭い、服装を整えると剣を抜いた。
ランツ伯の激しく早い突きが繰り出されてきた。
剣を引くときに上下左右に剣先が流れてくるのでうまく避けないと切れてしまう。
スピードについていけず、なんとか剣ではね避けようとするが相手の剣は重くてなかなか弾けない。
イングマルがひるんだところで振り降そうとする。
たまらず剣で受けるがあまりの重さと衝撃に片膝をついてしまった。
何とか弾いて構え直した。
腕がジンジン痺れているが剣はなんともなかった。
それよりもランツ伯の剣が凹んでしまった。
ランツ伯は驚いて剣を見直す。
「貴様、その剣どこで手に入れた?」ときいたがイングマルは「拾った。」とつぶやく。
ランツ伯は猛然とうち込んでくる。
「貴様を殺して、その剣いただく!」と叫んでいたが彼は足場が悪く、落ち葉で滑って姿勢を崩した。
すかさずイングマルの剣がランツ伯の腿に命中するがかすり傷程度だった。
ランツ伯が再び突きで反撃してくる。
下段から剣を弾いて素早く短剣で相手の腕の内側を深くはないが長く切った。
血がにじんでくる。
2人は再び対峙する。
「ラルフ・ストレームの太刀筋と似ている。」とイングマルはつぶやいた。
ランツ伯は「ラルフは我が弟子だ。」といい、イングマルは「なるほど」とつぶやいた。
太刀筋が似ているとは言え、やはりこちらは精度もパワーも段違いだった。
構えに入る癖やためを作るときの体や足の位置や動き振る舞い全体に貴族らしい気品というか、優雅さみたいなものが見えた。
「さすがだな」とイングマルは思ってたがイングマルにはそんなものはどうでも良いものだった。
ランツ伯は再び突きを送り出そうとする。
イングマルにはもう次の攻撃が予想できてしまっていた。
ランツ伯がためを作って次の攻撃に入る前に、イングマルは短剣で手足を切る。
相手がひるむと今度は猛然と打ち込み甲冑の上からも構わず打ち込んだ。
ランツ伯は手も足も体も傷だらけになり、血が地面に滴っていた。
息が上がって苦しそうだ。
彼の剣の刃はすでにボロボロになっている。
ランツ伯は体当たりしてきて、抱きつこうとする。
イングマルはランツ伯の上を飛び越え、宙返りしながら背中に剣が命中する。
薄い背中の甲冑が割れ、少し剣がめり込んで切れた。
それでもなんとかイングマルを捕まえて絞め殺してやろうとする。
イングマルの革ベストを捕まえ、しがみつかれた。
そのまま崖に向かって行く。
イングマルは革のベストの紐を切り、首を抜いて素早く脱ぎ捨てた。
ベストをつかんだまま、ランツ伯は崖を転がり落ちていった。
イングマルは枝をつかんで落ちるのを免れた。
何度も岩に体をぶつけ、激しく転がり落ちたランツ伯にイングマルはそばへ寄った。
甲冑のおかげで致命傷は免れたようだが気を失っている。
手足は変な方向に折れ曲り、骨折しているようだ。
イングマルはランツ伯の甲冑を脱がせ、切り傷を布で抑え折れた手足に添え木して布を巻いて固定した。
イングマルは自分の革ベストを探して着直した。
あたりを見回してからふーっとため息をつくと「そういえば、もう1人いたはずだがどうしたんだろう?」と1人足りないことを思い出した。
あたりをくまなく探すと斜面の途中の罠にかかり、逆さ吊りになっていた。
足元にクロスボーが落ちている。
どうやらランツ伯と勝負している間に狙撃するつもりだったのだろう。
イングマルはそれを拾い、逆さ吊りの相手を狙う。
「このまま立ち去り、二度と僕に構わないと誓約すればランツ伯とあなたを開放する。」とイングマルは言った。
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