第28話 対峙
ランツ伯は山賊にやられたという6人の傭兵崩れたちにも会った。
彼らは包帯や松葉杖をついていたが明らかに嘘をついているのはすぐにわかった。
彼らの言動がみんな違っていたのである。
酒と金を渡して本当のことを聞き出した。
ようやく真相が明らかとなった。
ランツ伯は今度の峡谷での戦いも「イングマルの単独では無いのか?」と思うようになった。
矢の種類がひとつであったことも考えるとそう判断した。
ますます「イングマルと戦ってみたい」という思いが募ってきて、一刻も早く出かけたかった。
ランツ伯はかつてイングマルと会ったことがある仲間の騎士と腕利きの仲間と合計5人で峡谷の戦いがあったところへ向かった。
他の者には邪魔されたくないので知らせなかった。
イングマルは「次の戦いはさらに大人数で来るだろう」と思い、山全体を使って戦うつもりでありとあらゆる場所に仕掛けを作ったのだがなかなか追っ手が現われない。
「こんなことなら早くエストニアに向けて出発すべきだった」などと悩んでいた。
そうこうしているうちに騎馬の5人が現れた。
たった5人なので追っ手ではないのかと思ったがそのうちの1人が街道でイングマルと話したことのある騎士とわかった。
たった5人で来たからには相当な手練れなのだろう。
警戒しているのが遠くからでもよくわかる。
イングマルは大勢を相手に考えていたので「どうしようか?戦おうかやり過ごそうか?」と悩んでしまった。
有無を言わせず攻撃するか。
「話し合いは無理だろうなぁ」などと考えていた。
そうこうするうちに、どんどん進んでくる。
イングマルは迷いを払い、石落としで攻撃することにした。
仕掛けのある場所に先回りするとやってきた人数が4人しかいない。
「一人足りない?後方に控えているのか?」だがその様子もない。
山中を移動されたのか?そちらを先に対応するか?しかしこの4人も放ってはおけない。
イングマルは前回と同じく仕掛けの中に入った4人を見計らってバリケードを落とし行く手を塞いだ。
すぐ石を落とした。
2人が石が当たり怪我をしたようだ。
残る2人は馬を巧みに操って、斜面をひょいひょいと駆け上がる。
上まで上がって来れないが石をよけてしまった。
人数も少ないので後方にも下がりやすい。
怪我をした2人は素早く後方に退避した。
イングマルは先に進み次の仕掛けに向かう。
2人はバリケードを迂回して先へ進む。
再び落石が襲うが今度はタイミングが遅すぎた。
後方に石が落ちてる。
馬はスピードを上げて先に進むがとても狭い通路に入った途端、前からと上からと丸太が降って来た。
先頭にいた馬に丸太が直撃して飛ばされてしまい、馬の下敷きになってしまった。
しかしたいした怪我では無いようで、這い出してくると後方に下がる。
残った1人は馬を降りて歩いて慎重に進んでくる。
イングマルはクロスボーを構えて狙うがその相手は立ち止まると大声で「イングマール!」と叫んだ。
「聞こえているだろう!イングマル・ヨハンソン! 私はサムソン・ランツ伯爵だ。! ヴァーベルト公爵の命を受けてお前を捕らえに来た!。」
「だが今はそんな命令の事などどうでもいい。
いまはお前と正々堂々と勝負がしたい。
私と立ち会え!イングマル。
騎士として剣士として勝負しろ。!聞こえているかイングマル!!。
私と勝負しろ!!」と叫んだ。
山全体にこだまする。
ランツ伯の後、ほんの数メートルほどの茂みからイングマルがひょいと姿を現した。
ランツ伯は「ぎょッ」として驚いた。
目の前にイングマルがいたことにも驚いたがその格好にも驚いた。
体中に木の枝や木の葉がくっついて、完全に山の風景に同化している。
イングマルはカモフラージュしたポンチョのようなものを脱ぐと、少し髪の毛が伸びて顔中に炭を塗りたっくった姿で現れた。
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