第21話  事件







マティアス、ヨルゲンも馬に乗った。





フィリップは高々と剣を掲げ「木剣の試合に勝ったからといい気になるなよ。


真剣なら貴様など一撃で殺せるのだ!」と叫んだ。





殺気に満ちた目をしている。




「貴様の家は国に不利益をもたらし隣国を儲けさせる、売国奴だ。



そんな金で学園に入った汚らわしい奴!ここで成敗してやる!」





「知ってるか!貴様の家はもうじき取り潰されるのだ!前から監視をつけている。反逆の容疑でだ!何もかもおしまいだ!ははははー!」





イングマルは目を丸くした。





「そうそう、貴様には犬がいたな、黒いやつ。



あれなら夕べ我らが殺して食ってやったわ。がはは。



犬は食べると美味いもんだな!」と狂ったように叫んだ。




そしてゲラゲラと腹を抱えて馬上で笑い出した。





イングマルの髪の毛が逆立っていたのである。





その姿があまりにおかしかったようでマティアス、ヨルゲンも笑っている。




2人は初め戸惑っていた様子だったがつられて笑っていた。










イングマルは頭の中で「そんなはずは無い、うそだ、ありえない。」と繰り返していたが考えられなくなってしまった。





やがて考えるのをやめると一言「フランクを殺そうとしたのはなぜだ?」と聞いた。






「気に入らないからだ!」とフィリップは叫んだ。








「奴は腕っぷしも強くて、おれよりもてるからな。気に入らねー。



気に入らん奴はどいつもこいつも皆殺す。



貴様らは我々にひれ伏していればいいのだ!」と叫んだ。






イングマルはもう何も言わず考えるのをやめた。












イングマルは馬上3人の騎士に取り囲まれ剣を向けられた。




彼らが動き出すより早くイングマルは動き、マティアスの馬の腹の下にもぐりこむと右のあぶみを持ち上げマティアスを落馬させると彼が落とした剣を拾い、仰向けで倒れているマティアスの首に剣を突きたてた。






マティアスは声も上げずに絶命した。





剣を引き抜くと、首から血が噴き出した。





イングマルはマティアスの馬に飛び乗り全速で駆け驚いて固まっていたヨルゲンに向かって突っ込んでいった。





慌てて剣を構えようとしたヨルゲンだったが、構えたときには脇の下から背中に剣が突き抜けていた。





そのまま地面に落ち2、3回はねたかと思うと動かなくなった。




ヨルゲンが落とした剣を拾い再び馬に飛び乗ると今度はフィリップのほうに向けて駆け出した。





フィリップは剣を顔の前で捧げつつその後右手を突き出し、突撃の構えでイングマルに向けて突っ込んでいった。




イングマルは馬同士を正面にぶつけさせると飛び降りて、馬が立ち上がってあばれているのを制御しようとしているフィリップの左太ももを切り裂いた。





フィリップはそのまま落馬し、仰向けに尻餅をつくと同時にイングマルに袈裟懸けに首元から斬られた。





甲冑の中ほどまで切り裂いて止まった。




イングマルは素早く剣を引き抜くと、フィリップは仰向けに倒れた。





「ちょっと待て」といいたかったのか「ちょっ」といったところでイングマルに、薪割りのようにして首を切られ、首は群衆の中へ飛んでいってしまった。





群衆からは悲鳴が響きわたり、パニックになった。
















逃げ惑う人々や見守る人々、遠巻きに見ているだけだった衛兵が恐る恐る近づいてイングマルの周りに立つと剣を持ったまま動かないイングマルをしばらく見ていた。




やがてそっと剣を取り上げた。





ロベルトはイングマルを何度もよんだが、イングマルは聞こえていないようだ。





イングマルはすっかり衛兵に取り囲まれ、後ろ手に縛られ 衛兵に囲まれたまま衛舎の方へ連れていかれた。


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