第20話  出発3







「一日遅れた分をどう取り返そうか?」そんな事ばかりを考えてないと、心臓のドキドキがなかなか止まらなかった。





考えたあげく1番最短の山越えを選んだ。





普段なら大変な山越えも気分が高揚していたせいか、全く休みなく1日中かけ続けた。





その日の夕方には全身ドロドロになってフランクの家にたどり着くことができた。





フランクの両親はイングマルの姿を見て驚いて「一体どうしたんだ!」と聞いた。





イングマルは「ちょっと道に迷って。」とごまかした。





お腹がものすごい音を立てているのを聞いて、フランクの両親はあきれた様子で食事を出してくれた。





すごい勢いで食べてしまうとそのままお皿の中に顔をつっこんでぐーぐーと寝てしまった。




目が覚めるとフランクの横で寝ていた。






あたりは暗かったがフランクを覗くと体のはれがもとに戻っていたが顔の傷がひどい。




額が割れ左目の周りもひどい傷がある。






「これは一生残る傷だな」


イングマルは思った。





フランクに声をかけると「ん、ん、」とうなった。




どうやら反応はあるようだ。




少し安心するとイングマルはまた眠りに落ちた。










明け方、起きるとフランクの両親はもう起きていて昨夜のお礼を言った。




お返しのつもりでまき割りをし、フランクの様子を聞いた。






だいぶ反応するようになってきていて、時々体を動かすこともあるがまだ意識は無いという。





朝食をご馳走になりイングマルは支度を整えるとフランクをもう一度見舞った。




フランクに声をかけると「ああ」と返事をした。




イングマルはもう一度「フランク、イングマルだ、分るか?」と聞いた。






フランクは「ああ、わかる」と答えた。





イングマルはすぐに両親を呼びに行った。




両親は飛んできてフランクに声をかけた。




フランクは「わかる、わかる。 腹が減ったよ。」と言った。




両親はすぐ食事を持ってきて泣いて喜び、イングマルはそれを見届けるとすぐに出発した。










日が昇ってきて街道を進むと往来する人も増えてきた。




やがて学園前まで来ると何やら通りの真ん中に人だかりができている。




なんだろうとのぞいてみるとロベルトが公爵の息子フィリップと子爵の息子マティアス、それに男爵の息子ヨルゲンに蹴飛ばされていた。





うずくまるロベルトを踏みつけにして蹴り続けている。






イングマルは飛び出してマティアスに体当たりしてはねとばすとロベルトを抱きかかえ「何をしている!やめろ!」と叫んだ。





マティアスは「クソ!」と言いながら立ち上がると顔中ガーゼを貼り付け歯抜けのフィリップが口を開く。






「やっときやがったか。剣士殿のお出ましだ。」といった。





イングマルは「何をしてるんだ!」と叫ぶ。






フィリップは「このものんが、我らにふ礼な振る舞いをしたので教えてやっているのんだ、身分相応の振る舞いをな。



貴様らのような下賎のものはそうやって這いつくばっていればいいのんだ。」


と歯抜けの言葉で口汚く罵った。






「ふざけるな!!往来でこんなことをすれば、家名に傷つくのはお前らのほうだぞ!」とイングマルはいった。




「待ってました」と言わんばかりにフィリップは馬に乗り剣を抜いた。




真剣である。





「貴様にはやはりこれがいるようだ。」






群衆は大きくざわめいた。


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