第15話  帰宅1







ロベルトはしばらくフランクの家にいるという。




イングマルは今日中に伯父の家に着きたいので、ここで別れることにした。




フランクの母親から弁当をもらい、叔父の家へ向かう。








叔父の本宅は首都にあるのだが商売に都合が良いとのことで、この街に店舗兼住宅がある。






小走りで駆け続けたので夜には叔父の家に着いた。








門を開けて入ると動物たちが走り寄ってきた。



みんな山にいたときのものだ。



馬、犬、鶏までイングマルに飛びついてきた。




イングマルもやっとほっとしたのか、喜んで動物達と転げまわってじゃれあった。








動物たちの騒ぎを聞きつけ家の人が出てきた。




家に入ると叔父、叔母が笑顔で待っていた。








「おかえり」と声をかける。






イングマルは少し照れくさそうに「ただいま」といった。






家の使用人達もやってきて、みなイングマルを取り囲んだ。



みんなに会うのは入学以来、数ヶ月ぶりである。






どうやらみんな剣術大会のことを知っているらしい。



「おめでとう」と口々に言った。








イングマルは持っていた包みを開け、剣士の杖を叔父に渡した。



皆それを見てホーと声を上げ、拍手となった。






皆初めて見るもので我先にと近寄って眺めた。










 少し遅い食事となりみんなで食べた。




大変なご馳走になり遅くまで騒いでいた。




イングマルはイスに腰掛けたまま眠りこけていたが叔母に促されて自分の部屋に行き、そのままベットで深い眠りについた。






 朝はいつもどおり早く起き、素振りの代わりに薪割りをした。






薪は十分にあったのだが構わず薪割りを続けた。




やがて使用人たちも起きてきて、パタパタと忙しそうにしている。






薪割りを済ませると納屋の動物たちの世話をした。




稲わらを取り替えボロを出す。




馬たちにブラシをかける。




馬も犬も鳥たちも喜んで、イングマルから離れようとしなかった。








「おはようイングマル、早いね。もっとゆっくりすればいいのに」と会う人みんなに言われた。






犬と戯れながらトリちゃんたちを肩に乗せて遊んでいると、近所の人たちがやってきた。




どうやら皆イングマルのうわさを聞きつけて剣士の杖を見に来たらしい。





平民にとって初めて見るものなので、もの珍しくて次々とやってくる。





イングマルにはどうでも良いものだったが世間の人々はこういう権威の象徴みたいなものがありがたいらしい。





現にイングマルよりそのものだけを見に来たようで多くの人がイングマルに見向きもしない。




イングマルにはその方がありがたかった。




家ものは皆、客の対応に忙しい。






イングマルは使用人達と裏でさっさと朝食を済ませると、馬と犬と一緒につれて散歩に出かけた。





家の近くの水車小屋の川を下り林が続く小路を抜けると、少し大きな川に出る。





まだ朝早いのであちこちで鳥がさえずっている。





イングマルは持ってきた釣り竿を垂らしてみた。




すぐにますが釣れた。




いつもなら持って帰る所だが、魚籠を持ってくるのを忘れたのですぐ逃がした。






犬のトミは少し残念そうに見ている。






まだ朝もやの残るこの風景はとても美しかった。








イングマルの生まれた山の森も美しいかったが、この街に近いけれどこの場所もイングマルは好きであった。




1日中でもここにいれるのだが、こうしてもいられないと思い直しすぐに帰った。




日が昇ると家の出入りが激しくなり仕事が始まっていた。






叔父はもうすぐ隣国に商売で出かけるので忙しいようだ。






商売の旅に出ると2か月ほどは帰れない。




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