第9話  2人の考察









ロベルトに言われて逆立っていた髪の毛が勝手に戻ると同時に血が引いているのを感じ、体がなんかだるく力が抜けていくのを感じた。




イングマルはボーとして何かを考えている。








何度思考を巡らせいても答えが出ない、とわかったイングマルは 考えている事がそのまま口をついて出た。




「なぜだ!」と大きな声でロベルトに聞いた。




ロベルトは大きな声に驚いたが考えていることは同じだったようで、しばらくして「やはり、どうあっても平民が勝つのが我慢ならないのだろうね。」と言った。




すかさずイングマルは「それは試合についてだろう。フランクは負けただろう。しかも正々堂々の戦いで相手は勝ったんだ。



それなのに、どうして負かした相手を痛めつけるんだ。



そんなことをして何の得があるんだ。意味がわからん。」





その点はロベルトも同じ考えだった。





ロベルトは考えられる事を言ってみる。




「貴族に互角の戦いをした事が生意気で気に入らないとか。



左腕の攻撃が想像以上に痛かったか。



何らかの取り決め、八百長がありその通り従わなかっただとか。



試合とは全く関係のない何か恨みがあるだとか。



金品の取り立てあるいは逆のふみ倒し。



弱みを握った。または握られた。



何かの口封じ。



そんなところか?」とつぶやくように考えられることを列挙してみた。








どれもありそうなことだった。





イングマルはさらに考えを巡らせ、そのまま口から考えていることが漏れ出てくる。




「医務室には誰もいなかった。




フランクは医務室でやられたと言ってたなぁ。




医務の担当者も関ってるとなると、学園そのものが関わっていると言うことか?




学園長自身も変わっているのか?なぜだ?平民参加を決めたのは学園長自身ではないか?




いや、やはりそれは考えられない。矛盾する話だ。




平民の参加が気に入らなければこれまで通り平民は無視できた話だ。




参加者を募りながらそれを痛めつけるというのはどう考えてもおかしな話だ。




それにそんなことが公になれば、平民の学園への入学が減ってしまう。




そうなれば学園の経営にも響いてくるだろう。」








実際平民の入学者は学費だけでなく寄付金が莫大で、実質学園経営はそれらで成り立っていると言っていい。





それらが減れば学園の存続そのものを危うくする。





考えれば考えるほどわからなくなってくる。





いろんな疑念が湧いてきて、イングマルはパニックになってしまった。





ロベルトが「このまま考えても真相や結論を出すには早すぎる。



とりあえずイングマル、君はこの勝負に勝つことだけを考えろ。



君が勝てば相手も何らかの行動に出てくる、そうすれば何かわかることもあるだろう。



水も食事も、大会が終わるまで学園内ではしないようにしよう。




毒殺の可能性も出てきた。」






イングマルはうなずいて覚悟を決めた。





お祭りのような剣術の試合が、命がけのサバイバルになろうとしているのを二人は感じていた。




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