第6話  子爵の息子マティアスの試合







会場のあちこちで試合が行われていた。






一回戦がほぼ終わり、少し休憩があった。




平民で残っているのは、イングマルをいれて4人だけとなっていた。




 皆からだの大きな、見るからに強そうな者たちである。




 身分を問われなければ、立派な騎士に見える。










 2回戦はその1人、フランクケイズと、公爵の息子の取り巻きの1人、子爵の息子マティアスフェルトである。






 フランクは鍛冶屋の次男で、小さい頃から親の手伝いをしているのだろう、凄く太い二の腕をしている。





 鍛冶屋と言っても職人集団で、王都では誰もが知っている工房である。




木剣もそれに合わせて、とんでもなく太くて重そうである。





 イングマルの足ほどありそうな太さである。




そのこん棒のような木剣を軽々と振り回し、体を揺すっている。






 子爵のほうは軽甲を着てすこし長めの木剣で、頭にヘルメットを被っている。




左の腕から肘にかけて小さな盾がついている。





 「始め!」の合図で両者飛び出したが、フランクの上段からの振り下ろしをマティアスは盾で受け止めたが、あまりの勢いに体ごと後ろに飛ばされた。




苦痛に顔が歪む。





 マティアスはまともに受けては身が持たない、と判断したのだろう、剣を素早く繰り出し、フランクの攻撃する間を与えない。





 フランクは鍛冶屋の癖なのか、垂直に振り下ろすのは強力だが左右の払いや下段からの攻撃は明らかにお粗末だった。




さらに足場を固めた状態でないと、威力もスピードもさっぱりだった。




そのためすこし距離をとって足場を固め、相手が間合いに入った所を打つ、というスタイルをとった。



 マティアスもその事を悟って、うかつに近づかない。





 少しにらみ合いが続いた。






 マティアスは右に左に素早く移動しながら、間合いを計る。





 フランクは体の中心を軸に旋回しながら、相手を常に正面にとらえる。





 なかなか間合いに入らないのに苛立ち、フランクは近づいて間合いをつめるが、やはり移動しながらの攻撃は有効打にならない。






 逆にマティアスに、足や腕をしたたかに打たれてしまう。





 体のバランスを崩すと猛然と足やすね、腕を狙って打ってくる。






 普通の者ならとっくに戦闘不能に陥るところだが、


 フランクはあきらめない。





 力任せに横に払うが、やはり遅い。






 マティアスは素早くかわす。





 マティアスが優勢だが、なかなか有効打が決まらない。





 両者息が上がって、肩で息を切らしている。






 フランクは、腕やももに赤いアザがいくつもできている。





 マティアスが隙をついて剣を打ち込もうとした所へフランクは剣を打ち下ろすが、これはマティアスの作戦だった。






 マティアスが前に出ようと見せかけて後ろへ飛び退き、フランクの剣が振り下ろされた瞬間、マティアスの下段からの振り上げがフランクの顔面に命中した。




「がっ!」という悲鳴とともにフランクは両手で顔面を押さえ、地面に転げてつっぷした。






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