第2話
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大国、リングマー・オウウィン王国から遥か南西に離れた
目的は人探しで、噂や目撃情報を頼りに様々な国を渡り歩く独り旅をし始めてから十年が経っていた。
「三日間聞き回って
宿に戻り、風呂に入り、そのままベッドに突っ伏すと、この三日間で気力と体力を磨り減らしていた身体はすぐに眠りに堕ちていった。
翌朝、身支度を済ませ早々と町を出ようとした所で、関所の衛兵に呼び止められた。
「急に呼び止めてすまない。君の名前をもう一度確認したいのだけれど。」と衛兵は言う。ログナは警戒こそしたものの相手の衛兵の様子から害無しと判断し、「ログナ・フィネットだ。」と名乗った。
それを聞いた衛兵はホッとしたように「あぁ、良かった。君に渡してほしいと頼まれていたんだ。きっとこの街を訪れるからと。」と一通の手紙を差し出した。
ログナが手紙を受け取ると用事はこれだけだからと衛兵は関所へと戻って行った。
ログナは首を傾げた。なぜならログナには文通をしている者など一人もいないからである。取り敢えず中身を見なければ始まらないなと封を開けようとしたとき、手紙に付けられた押印に顔をしかめる。
その押印には見覚えがあった。
それは、世界有数の大国リングマー・オウウィン王国の国旗つまり王家の紋章そのものだったからだ。
状況を理解出来ないままログナは手紙を読み始める。しかし、その行動をログナは少し後悔した。
「ハハ・・・・・・・・・・・・・。
王城付き医師兼薬師に任命ってどういうことだ。何かの冗談だろ。」
予想外過ぎる急展開に状況を理解することを放棄しかけたが、ふと手紙の不自然さに気付き読み返す。
それは、至って簡単なことだった。
ログナ自身が一方的にリングマー・オウウィン王国のことを知っていたとしても何らおかしくはない。しかし、王国側がなぜ人探しの旅をしているだけの者の名と訪れている場所を特定しているだけでなく、その者が高い医術の知識と技術更に薬学にも詳しいことを知っているのかということだ。
ログナはこれまでの旅の中で自身のことを無闇に話したことなど無かった。それどころか、情報収集以外で人と接触することを避けていた。その為ログナ・フィネットという人物の詳細を知る人物はここ十年間では存在しない。その為、必然的にそれ以前に関わってきた者逹に限られてくる。
だが、万が一その者逹の中の誰かがログナの情報を流したとして、それでも十年以上経った今、容姿が変わっているだけでなく行き先が不特定な旅をしている人間の居場所を当てるなどあり得ない。
ただ唯一幼き頃たったの二年間だが共に過ごし、その後消息を絶ちこの十年間探し回り続けている、アイツならそのくらい難無くしてしまいそうだが・・・・・・・・・・・・。
そこまで思い至って一つの可能性に行き着く。ログナにとって最低最悪な結果であり、しかし、予測の
「マジかよ・・・・・・・・。
もしそうなら、
誰に言うでもなくログナは呟いた。
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